
この人と離れると世界がなくなってしまう、とまで思っていた夫がいたのに、別な人に出会って惹かれ、気がつくと彼と過ごす時間が増えていった。ついには元夫と別れたが、「特別な関係」はかわらず、互いの自我を見つめ合った時間はそう簡単には解消できない。そして、三人承知の上の奇妙な三角関係がはじまる。その濃密な時間はずっと続くと思われたが……。揺れ動いた五年間を、当時の日記と写真で綴るドキュメンタリー。
「元夫の自我の受け手としての自分に執着し」たのだと著者は言う。当たり前だが、人は自分だけで生きているわけではない。それは、生活が一人では成り立たないという意味ではなく、誰かに見られ、評価され、関わられることによって、自分自身が変容していく、それが生きていくということだからだと思う。この本を読むとそのことを強烈に感じる。自分も相手もどうなっていくのかよくわからない。近づけば近づくほど遠く、わかったと思った瞬間にわからなくなる、そんな感じだ。それがそのまま、投げ出されている。
人は生きていると、ああこの瞬間、と思うときがある。それを著者のカメラはちゃんと捕らえている。そう思って撮るわけではないというが、瞬間瞬間が、ナレーションのような文章とともに過ぎていく、まさに映画のような本だと思う。
生きることと表現することに興味のある方は、ぜひご一読ください。
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