
本書は、ヘレン・ジェファーソン・レンスキー(Helen Jefferson Lenskyj)によるThe Olympic Games: A Critical Approach(2020)を邦訳したものです。レンスキーは、1980年代からスポーツとジェンダー研究,スポーツとセクシュアリティ研究のパイオニアとして活躍し、トロントが候補都市となった1996年オリンピック大会の分析を通じて、スポーツ・メガイベントの社会への負の影響について研究を始めました。
本書では、オリンピックへの批判的研究の切り口が次々と胸が空くようなシャープさで示されています。
関連する資料の在り処が惜しむことなく示されており、オリンピックへの理解を深め、批判的研究を進めるための道標とも言えるでしょう。奇しくもコロナ禍によってオリンピックが延期され、開催さえも危うくなる中で、オリンピックというメガイベントの虚構性が露呈しつつあります。一般の人々の目に映るオリンピックは、スペクタクルで感動的なスポーツの競技大会であるかもしれませんが、巨額の財源が誰の手でどのように動いているのか、注視すべき時です。「アスリートファースト」の掛け声の真相をあらゆる立場の競技者から見直すきっかけにもなるでしょう。オリンピックの唱える「レガシー」が、真に万人のためのものへと変革されるかどうか、目を凝らし、耳を澄まして見極めたい。
第1章 序文と背景
第2章 オリンピックへの抵抗オリンピック研究と「オリンピック知」
第3章 スポーツと政治を混合しない
第4章 オリンピック産業のインパクト
第5章 改革――「名声を取り戻す」
第6章 アスリート、政治、抗議
第7章 スポーツを通じた若者の教育
第8章 アスリートの権利、アスリートの人生
第9章 ジェンダー方針――課題と対応
第10章 オリンピック――「福祉プログラムではなくベンチャービジネス」
詳細は、晃洋書房のHPをご参照ください。
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