女の本屋

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金井淑子 『依存と自立の倫理--「女/ 母」(わたし)の身体性から』

2011.03.07 Mon

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.本書では「自立と依存」ならぬ「依存と自立」の倫理の課題を、ウーマンリブの立てた「女(わたし)」という主体に対してあえて「女/母(わたし)」を記号化するところから、考え議論しております。さらに「人間存在のヴァルネラビリティ(脆弱性)に根ざしたケアロジーの創造」につなぐ問題意識の提示にも及びたいという思いを表題・副題に託しました。母性神話崩しをしてきたフェミニズム内からは、「依存」や「母」を引き込む議論に対しては「またぞろ妊娠言説パラダイムか」という警戒や批判の声も、さらプロフェミニスト男性からの「男の身体の位置づけはどうなるのか」という疑問も予想されます。

しかし、グローバル化や新自由主義を背景とする格差社会の人々の生の基盤の脆弱化やさらにミクロ的にも私的領域の親密圏の「暴力性を帯びた家族」としかいいようのない現実を前にして、これらに対抗する視座として、「ケアの倫理」の規範性や「いのちへのまなざし」を立てようとすれば、そこでは「母のメタファー」「母の経験」「母の身体性」への問いはどうしても手放すことができないと考えたのです。田中美津さんの「取り乱しウーマンリブ論」の言葉と「おんな(わたし)」に触発されフェミニズムの課題と格闘してきた私ですが、ここにきて改めて、「胎児を孕んでいる女一人称を語る言葉の不在」「いのちを生むことへの考察の空白」への自覚を促す森崎和江さんの近代批判の視座に立ち返らずにはおれませんでした。そうした思いのなかで田中美津さんと森崎和江さんをつなぐところで立てた、日本のフェミニズムからの/への、「女/母(わたし)」という女性の記号化の提案です。

もう一つ本書には、二十年来の私の家族論に寄せる問題意識が、フェミニズムと倫理学の往復のなかで「依存をめぐる倫理的問い」に行き着き、そこから拓かれる「親密圏」への関心軸があります。家族から親密圏へ、さらに「親密圏の脱・暴力化」から「自己領域」へ、さらにそこから「いのちへの視座」に至りつく軸です。いずれも、現在の生きがたさの只中にある者たちの傍らに立ち(私自身を例外とせず)、その声なき声(私自身の内なる声)の聴取を通して、人が生きる意志・いのちをつなぐ関係の育みにつながる倫理的視点を紡ぐ。「声から立ち上がる倫理」への希求であり、「女(わたし)のからだ」から「母・いのち」を切り捨てず、しかし「女・わたし」も明け渡さずに、世界と向き合う。「女/母(わたし)において、ケアの倫理と正義の倫理がせめぎ合う討議の場としての「コーラ」が拓かれることへの思いに基づく関心軸です。

以下は目次内容の紹介です。

第1章 弱いパターナリズムとしての〈ケア倫理〉へ――触発する現場/臨床知を通して――

第2章 女性と家族の近未来論

第3章 現代家族の深層へ

第4章 「家族問題」から「ファミリー・トラブル」の間――暴力性を帯びてしまった家族の暗部へ――

第5章 家族と親密圏の間――依存をめぐる倫理――

第6章 親密圏とフェミニズム――「女の経験」の最深部に――

第7章 新たな親密圏と女性の身体の居場所

第8章 親密圏と個的領域――自己へのケア――

第9章 いのちへの視座――女/母からの倫理――

(著者 金井淑子)








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