（渡辺みえこさんよりいただきました）


井上輝子さん追悼

　井上輝子さんがお亡くなりになられたと伺い驚き、あの少し上向き加減の優しい笑顔が、思い浮かび、信じられない気持ちです。
　緑内障の治療をしておいでと伺っていましたので、目の方でと思いましたが体調不良でいらしたのですね。私より一歳年上でいらして、いつも気さくなシスターフッドにあふれておいででした。　
　私は和光大学の非常勤講師だったことがあり、日本文学購読を担当していました。
　お昼休みに井上輝子さんと船橋邦子さんが、定食のお盆を持って、非常勤講師控室にいらしてくださっておしゃべりをしました。井上さんはだいたい唐揚げ定食でした。
　私は毎回短編小説のレジメをお二人に差し上げて、お二人とも毎回読んできてくださって、感想や疑問点などをお話しくださいました。お二人とも社会学研究者の広い視野から、また主に女性主人公の場に痛みを感じ、掬い取る鋭い視点の意見をおっしゃっておいででした。
　私もお二人の感想を伺うのが楽しみでした。
　井上輝子さんは、立派なお仕事をされたフェミニスト社会学者で、学生に慕われる良い先生で、貴重な文学読者でした。
　いつか文学論もまとめていただけたら読みたいと思っていました。
　女性学への愛は強く、ご自分に厳しい謙虚な方でした。地味なお仕事も誠実になさり底辺の女性たちに優しい方でした。　
　私の詩や文学論も読んでくださって誠実なお返事を下さり、次の論が楽しみですと書いてくださって、読んでいただけなくなって悲しいです。
　井上輝子さんがフェミニストの中においで下ったことは幸せでした。そのお仕事は後に続く女性たちを助けてくださり、女性たちのために力を尽くされた彼女は、これからも女性たちを見守ってくださっていると感じます。

　井上輝子さんのご冥福を心からお祈りいたします
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　渡辺みえこ

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井上輝子さん追悼　WAN掲載記事　https://wan.or.jp/article/show/9659
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