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セクハラ推奨広告抗議に回答:「誤解」って何ですか!? 牟田和恵

2014.10.26 Sun

WANサイト9月25日掲載の「呆れたセクハラ奨励広告に抗議文を出しました!」でお知らせしたように、9月23日付朝日新聞紙面広告中に、キャビンアテンダント(CA)へのセクハラを指南・推奨するような雑誌の宣伝文言があったことについて、朝日新聞社・雑誌MADURO誌(セブン&アイ出版および株式会社yanG)・ボーズ社の4社に対して質問ならびに抗議文を出しておりました。各社から回答が来ましたので、ご報告します。

まず、朝日新聞社広告局からは、直接私に会いに来られ、回答文書をいただいたほか、掲載までの説明を受けました(ボーズ社は、朝日に対応を一任とのことでした)。また、MADURO誌を発行発売の二社からはそれぞれ、書留郵便にて回答文書をいただきました。
 
朝日の回答には、「空の旅の快適性と安全の確保という重要な職務を果たされているCAの方々に大変失礼な表現」であったこと、「セクハラを奨励する」意図はなかったが結果的にそうとられかねない表現になってしまったと「見識の不足」を認め、反省と今後の再発防止に努める旨が記されていました。
他方、MADURO誌を刊行するセブン&アイ出版とyanG社の回答文書では、「広告表現が誤解を招くような内容とならないよう最終確認すべきでした」(セブン&アイ社)、「当社と致しましては、「セクハラを奨励する」意図は御座いません」(yanG社)とありました。

両社とも、私の指摘を「真摯に受け止め」、「今後一層の注意を払っていく」と続けられてはいますが、誤解を招いた・意図はなかった、という言葉からは、私の批判の意図がじゅうぶんに理解されているのか、そしてあのような表現を新聞広告に掲載したことの反省が本当にあるのか、疑わしいように思えます。というのも、セクハラでは「そんな意図はなかった」「誤解を招いた」という言い訳がなされるのがしょっちゅうですが、これらの回答文言にもそれと同様の姿勢が感じられてしまうのです。そもそも、「セクハラする意図」があって生じるセクハラなどあまりありません(もちろん、「確信犯的」なセクハラもありますが)。する方・言う方は「何の悪気もなく」「軽い気持ち」であったとしても、セクハラの免責にはならないのです。この二社が言う、「そんな意図はなかった」ことを疑うのではありませんが、だからこそ、意図しないのに起こるのがまさにセクハラのメカニズムだということを理解し、そこから踏み込んでなぜあのような表現を用いたのかを真摯に反省しない限り、「今後一層の注意」など、ほとんど意味をなさないでしょう。

また、セクハラでは当人と受け手のとらえ方が異なるのが通例で、「誤解だ」と言い張るのはむしろ、セクハラだと感じる方が考えすぎで問題がある、と開き直って相手を責めることにもなりかねません。「誤解を招いた」という認識では、セクハラの本質に関する理解の不足を露呈していると言わざるを得ないと思います。

それに、「誤解だ」「そんな意図はなかった」と弁明する人は、そう言いながらも、セクハラと告発された言動の何が問題だったかは理解も反省もしていないことがしばしばです。先に起こった東京都議会でのセクハラヤジ問題でも、やっと名乗り出た男性都議が、謝罪と言いながら、「早く結婚していただきたいとの思いから、、」と、自分のヤジの何が問題だったのかまったく理解できていないピント外れの発言をしていたことは記憶に新しいです。二社がそうでないことを願いたいものです。

以上のように、納得できたと言える回答ではありませんが、私が「謝罪」を求めるような筋合いでもありませんし、これ以上の追及をするつもりはありません。本記事を読んでいただいて問題の理解をもう少し深めていただけるよう、そして三社全部の回答文書に書かれている通り、今後このようなことが再び起こらないよう努力していかれることを期待したいと思います。

この間のやりとりのなかで、あらためて考えさせられたことがありました。上述のように朝日広告局からの回答は、あの広告の問題性をちゃんと受け止めてのものでしたし、わざわざ足を運んで説明に来られたことからも誠意が感じられました。しかし、彼らとの話のなかで、企画段階から掲載に至るまでのあいだ、女性部員含め多くの人の目を経ているのに、あの広告が「セクハラに当たるのでは」「まずいのでは」といった意見は広告局内部では無かったということを知りました。私は、もしかしたら部内ではそういう視点もあったのに、全体の流れに押され反対意見が言えなかったり、あるいは無視されたりということもあったのではないかと想像していたのですが、違っていました。今のご時世、社会はセクハラには多少敏感になった、マスコミで働くような人はとくにそうだろうと私は思っていたのですが、それは甘い認識だったようです。CAや接客担当者に、すきあらば接近する、くらいのことは、男性にありがちな行為くらいに今でも軽く思われているのでしょうか。「それはセクハラだ」と言われればそうなのかとも思うが、通常は何とも思わずスルー、というのが残念ながらまだまだ世間の「常識」なのでしょうか。実際、最近、ミニスカートをCAの制服に採用し、自社従業員へのセクハラを商売の材料にしているかのような航空会社もあったほどですから、その推測は大きくは違ってはいないでしょう。
それに、この広告以外に限らず、私たちの社会には性差別的な広告があふれており、とくに新聞では民族差別をあおるような雑誌広告さえ頻繁に載っています。新聞紙上だけでなく、電車内など公共の場所にもいくらでもあります。それらが何の咎めもなく許されていることを思えば、今回抗議したようなセクハラ推奨広告が載るのも、ある意味、不思議は無いと言わざるを得ません。
広告は社会を反映するもの。性差別やセクハラ、人権侵害が現実に蔓延している社会で、広告だけが先進的であろうはずがない。広告はじめメディアの監視をすることも大事ではあるが、地道に一歩一歩、セクハラについての問題意識を喚起し、現実の差別や人権侵害をなくす努力をしていくことが不可欠だとあらためて痛感した次第です。

今回の抗議に注目してくださった皆さま、どうもありがとうございました。以上の報告について、ご意見ございましたら、下に記事コメントよろしくお願いします。
なお、朝日広告局からは速やかに、他二社も比較的早く回答をいただいておりましたが、私の方の事情で回答の報告を書くのが遅くなりましたこと、申し添えておきます。

誤解だ・そんな意図はなかった、のような典型的な言い訳についても書いています。宣伝臭くてすみませんが(笑)、再度紹介しておきます。アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.








タグ:性暴力 / セクハラ / 抗議

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