特集「子どもとお金のリアル」

子どもにまつわる最新トピックの論稿をあらゆる領域から集めた総合白書です。2025年版をもって61冊目。毎年冒頭に特集コーナーがあり、今年のテーマは「子どもとお金のリアル」です。

これまで日本の子育てや教育の現場において、お金の問題とそれに関わる法律や権利の問題はタブー感もあって十分に触れられてきませんでした。お金とは何かを深める機会が少ないのです。生活を営むことや働くことを経済合理性の問題に矮小化しがちなのも、そうした背景があるからではないでしょうか。そうなると、自立という意味を自分ひとりの経済力で生きていく孤立に近い意味でとらえてしまい、他者とともに生きるかたちの中に経済活動を位置づけにくくなります。これは大変もったいないことです。お金という資源を十分に生かせていません。こうした問題意識で特集を組みました。以下、論稿概要と著者を挙げながら内容を紹介します。

少子化問題を背景に、国や各自治体は競うように子ども関連の支援・助成施策を打ち出していますが(安達智則など)、子育てにかかるお金はそれでも増え続けており、子育ての大変さも軽減されているとはいえません。貧困・格差の問題もまだまだ改善されていません。これはなぜなのか。物価高騰問題はもとより(丸山啓史)、そこには「隠れ教育費」問題(福嶋尚子)や、支援メニューだけでは改善されない孤独・孤立の問題や制度の利用しにくさの問題(佐藤真紀、和田浩)などがあるようです。無償化がそのまま子どもの権利保障につながるわけではないことも見逃せません(福嶋尚子、米山幸治)。

また、デジタル社会の進展で激変する消費文化の中で、早くから自己責任が問われる18歳成人時代の子どもたちはどのように生き抜いているのでしょうか。親や友達との関わりのなかで、お金にまつわるさまざまな試行錯誤を経験してリテラシーを高めている子ども・若者のリアルな姿には頼もしさを感じます(高野慎太郎、呉宣児)。一方で、ふとしたことで闇バイトに加入して特殊詐欺に加担してしまうケースもあります(廣末登)。

だからこそ、子どものころから教育プログラムとしてお金のリテラシーを身につける必要性が高まっています(近藤博子)。大事なことですが、資産形成の名の下に投資偏重の内容にならないよう、やり方を慎重に検討しなければいけません(平澤慎一)。労働法や社会保障制度などを活用し自ら行動する力を養う「労働関連法教育」も大切でしょう(杉原純子)。

ジェンダー・セクシュアリティ関連の論稿も豊富にあります。「性教育バッシング」や「はどめ規定」に象徴される学校性教育の課題(門下祐子)や、子どもの性加害の背景にあるトラウマ体験の問題(宮﨑浩一)、埼玉県立高校男女共学化問題を通して考える学校構造のジェンダー不平等について(亀田温子)など、最新のトピックが目白押しです。ぜひお手に取ってご一読ください。

◆書誌データ
書名 :『子ども白書2025』
著者 :日本子どもを守る会(編)
頁数 :192頁
刊行日:2025/07/15
出版社:かもがわ出版
定価 :3080円(税込)

子ども白書 2025

著者:日本子どもを守る会

かもがわ出版( 2025/07/10 )