
全世界を向うに回し、ひとり荒野を歩き続けた“知の巨人”の生涯
『安井かずみがいた時代』『森瑤子の帽子』『ジュリーがいた』など人物ルポルタージュの話題作を上梓してきた島﨑今日子さんの最新刊。
詩を書き、小説を書き、評論を書き――77歳で筆を擱いた後、2023年4月8日に87歳で死去した作家、富岡多恵子。この大阪女子大学出身の作家の存在を知った時、当時、大阪で暮らしていた著者は、「大阪のひとでこんなにカッコいい女のひとがいるのか、と将来を発見した気分になった」。以来、富岡多惠子をロールモデルとし、生前には交流も持ちました。
参列者わずか15人という伊東での通夜に参列した日から、この作品につながる旅が始まります。池田満寿夫との7年間の事実婚の後、54年をともに暮らした夫、現代美術家・菅木志雄へのインタビューを中心に、親族、担当編集者、詩人、小説家、アート界――約40人の親交の深かった関係者へ取材を敢行。
富岡、小倉千加子とともに『男流文学論』を著した上野千鶴子は、「どんなに性描写が激しくなっても、女の書くものから性愛ロマンティシズムはなくならないのに、富岡さんだけは例外だった。愛と性が別ものだという、女にとっての性と愛の思考実験を極北まで見せてくれたあんな作家、他にいません。空前絶後の存在です」と語っています。
さまざまな証言から、全世界を向うに回し、ひとり荒野を歩き続けた“知の巨人”の生き方と、そこに通底していた思想が浮かび上がります。多くの方にお読みいただければ嬉しいです。
◆書誌データ
書名 :『富岡多恵子の革命』
著者 :島崎今日子
頁数 :365頁
刊行日:2025/11/25
出版社:中央公論新社
定価 :2500円+税
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