私が小児科医になった時にはなかった「発達障害」という病名を耳にした時に感じた違和感は、ずっと心に残っています。それは、「発達するもの」に「障害」という言葉は似合わないのじゃないかな、そんな感覚だったかもしれません。その言葉の前で、不安に押しつぶされそうなお母さんたちを目の前にして、何かできることはないか。診断をつけるだけではいけない、その前にしなければいけないことがあると。それだけの思いで小児科の外来でペアレント・トレーニングをしてきた気がします。

 ペアレント・トレーニングは日本語にすれば「親訓練」です。しかし、子どもの行動の理由を考え、成功体験や適切な行動に導くための環境調整をするという訓練を必要としているのは親だけでしょうか。医者は、保育者は、先生は、行政は、社会は、その訓練を必要としないでしょうか。まだ知識も経験もなく、どうすればいいのか困っている行動の心のうちを考えようとしない大人を子どもは一瞬で見抜きます。自分のことを分かってくれないという思いは心を閉ざします。子どもたちはいつの時代も、その社会の裏返しの存在なのだと思います。増え続ける「発達障害」と診断される子どもたち、あるいは特別支援学級の子どもたちや不登校の増加もまた、子どもではなく社会の発達障害かもしれません。

 もし、ソーシャル・トレーニングという言葉があるとすれば、この「共同ペアトレ」がその一端を担うことで、子どもたちを取り囲む大人たちと保護者をつなぐ支援の架け橋になってくれることを願っています。 (本書「あとがき」)

関連サイト
 著者の関連本が出ています。
 https://wan.or.jp/article/show/1158

◆書誌データ
書名 :”発達障害”の早期支援と共同ペアレント・トレーニング  ー子どもの”困った行動”を成功体験に変える!
著者 :上野良樹
頁数 :176頁
刊行日:2026/3/30
出版社:ぶどう社
定価 :2,200円(税込)

“発達障害”の早期支援と共同ペアレント・トレーニング: 子どもの“困った行動”を成功体験に変える!

著者:上野 良樹

ぶどう社( 2026/03/30 )