上野千鶴子氏が講じたNHK「100分de名著」のベストセラー・テキストが書籍に!

2021年11月に放送された「ボーヴォワール『老い』」のテキストは、おかげさまで多くの方にご購読いただき、ベストセラーとなりました。そこに書き下ろし特別章を加え一冊としたのが本書です。
古今東西の文献にある「老い」についての膨大な記述。それをボーヴォワールが渉猟・分析した大著『老い』を、本書では「老いを自己否定するしくみ」「さまざまな社会や職業別の老い」「老いと性」「老いの社会保障」という4つの視点から読み解いていき、弱者が弱者として尊重される社会を実現するために何をすべきかを考えます。
ボーヴォワールとの関係を上野さんは、本書の「おわりに」でこう述べています(抜粋)。

古典は何度でも読みかえす価値があるし、読みかえすたびに新たな発見がある。そして書物との出逢い時というものがある。若いときにはわからなかったことがわかるようになる。古典は読み継がれることで、その先へと読み手を導いてくれる。ボーヴォワールの『老い』はわたしにとってそんな本だった。
書物を閉じたところから、わたし自身の問いが始まる。わたしはボーヴォワールから勝手に「宿題」を受け取り、それに答えようとした。その答えの可否を、もはやこの世の人ではない彼女に問いかけることはできない。だが、執筆の間中、わたしは彼女と対話していた。書物を読むとはそういう自分ではない者との対話の経験だ。そしてしだいに、この問いに対してなら、彼女はきっとこう言うだろうという確信を深めるようになった。
彼女なら……きっと自分の老いの姿を公共の場から隠そうとはしないだろう。きっと安楽死の法制化に反対するだろう。死後の魂は信じないが、若者たちの未来は信じるだろう。「中絶の権利」を求めるデモの先頭に立って歩いたように、女性差別と闘いつづけた彼女は、高齢者差別とも闘うだろう。現実の社会の恥部に目をそらさず、それを容赦なくあばきながら、人間に対する信頼を失わないだろう。
根拠はないが、きっとそうだよね、ボーヴォワールさん。
生前に会ったこともない彼女に、わたしは問いかける。古典を読み継ぐというのは、そういう対話を意味する。あなたにも経験してほしい。(「おわりに」より)

誰にでも必ず訪れる「老い」。これまで人間社会の多くは「老い」を否定的に扱い、忌避してきました。そんな「老いの実態」を歴史や社会、文学や芸術といった分野から容赦なく暴き出し、「個人の問題ではなく、社会の側の問題」(=文明のスキャンダル)として「老い」を捉え直した画期的な作品を辛辣かつ平易に解説した本書を、「違いを認め合う社会」を希求するすべてのひとに読んで頂きたいと思っています。

◆書誌データ
書名 :『NHK「100分de名著」ブックス ボーヴォワール 老い 超高齢社会という「恵み」』
著者 :上野千鶴子
頁数 :148頁
刊行日:2026/07/25
出版社:NHK出版
定価 :1,210円(税込)