2013.07.09 Tue
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 「わたしは想像もつかないことを経験した。わたしは生きている。」
マグダ・オランデール=ラフォンさんは、今年86歳。ハンガリー系ユダヤ人で、16歳の時にアウシュヴィッツに連行されました。収容所での過酷な日々、死の記憶、解放されてからの戸惑い、そして、それからの長い道のり。途方もない時間をかけて、ぽつりぽつりと言葉が紡がれていきます。
「生きのびるために、わたしは自分の記憶を消した。この人生では時間をかけて忍耐強く回復した信頼関係だけが、わたしの締めつけた声を少しずつゆるめていくことを教えてくれた。」
解放後、30年の沈黙を経て、彼女は書き始めました。そしてそれをきっかけに、移住先のフランスで、中高生に自らの体験を語り伝える活動を始めます。
「わたしの言葉は、このわたしのようにか弱い。この記憶を平凡なものにすることなく、重苦しいものにすることなく、そして他人に苦しい思いをさせることなく伝えるにはどうしたらいいのだろう?」
10代の生徒たちに語りかけていくうち、マグダさんは再び書き始めます。そうして完成した本がフランスで出版されたのは2012年、昨年のことでした。
「わたしたちは、自分のなかに春の新鮮さと美しさを持っている。」
「今日、わたしが痛みをこらえて記憶の橋を渡っているのは、いのちは奪われてしまったけれど、最後までわたしたちに生きる勇気を与えようとしてくれた人々の思い出を末永く生かすためだ。」
沈黙のなかに生きてきた彼女が言葉とともに、息を吹き返すまで。死んでしまった仲間と新たな世代のために勇気をもって語られた、生についての記録です。
(編集者 鈴木英果)
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