2010.08.27 Fri
先日、公務員試験の勉強をしていると、こんな問題を見つけた。
A~Eの五人は図のような2階建てのマンションのa~eの部屋のいずれかに住んでいる。彼らは他の4人のうちだれか一人に自室の鍵を預けているため、自室ともう一つの部屋を開けることができる。
c d e a b 次のことがわかっているとき、確実に言えるのはどれか。
ア CはAに自室の鍵を預けている
イ Dはすぐ上の部屋の住人に鍵を預けている
ウ Bはcの部屋を開けられない
エ Cはc、dの部屋を開けられない
オ eの部屋はAもEも開けられない
カ Eの自室はcではない
1、Aはbの部屋を開けられる
2、BはDから鍵を預かっている
3、Cの自室はaである
4、DはEに鍵を預けている
5、Eの自室はdである
(資格試験研究会編『公務員試験 地方上級教養試験問題集 2011年度版』東京:実務教育出版、2009年、184頁)
この問題にBL的な香りを読み取ってしまったのは私だけではあるまい。ともかくもこれを見た瞬間、私の脳裡にはこの二階建てマンションの住人たちのあれやこれやが展開されてしまったのである。
たとえば条件ア。CはAに鍵を預けているから、AはCの部屋へ自由に出入りできる。だがCはAのところへは入れない。「Aは自分の好きなときにしか来ないから……」と寂しく笑うCの顔が目に浮かぶ。
それに加えて気になるのは条件ウ、エである。Bはcの部屋を開けられず、Cはc、dの部屋を開けられない。つまりC→cの部屋の住人←Bという図式になるわけだ。おそるべし、cの部屋の住人。魔性である。これに条件アを加味すれば、cの部屋の住人はAということになるだろう。
条件イも気になるところである。すぐ上の住人とDは仲がよく、毎日酒でも持って遊びに来ているに違いない。いい加減飽きねぇな、とか言いつつもDは上の階の住人を迎え入れ、二人でだべったりご飯食べたりしているのだ。その内にDは疲れて眠ってしまう。上の階の住人は、彼に毛布をかけつつ、この関係がずっと続けばいいなぁ、とか思っているのだ。
となると、気になるのは上の階の住人である。条件イからDはaかbに住んでいる。で、Cはc、dの部屋を開けられない、かつ条件オからCの住むのはeではない(いっそeに住んでいればどれほど楽だったろうか)ので、一階に住むのはCとDだ。同じ条件オから、Eもeに住んでいないから、Eの自室はdということになる。
残るeはBが住んでいる。DはEかBに鍵を預けているということになる。Dがaに住んでいる場合、部屋割りは以下のとおり。
c A | d E | e B | |
a D | b C |
ただし、DとCが逆である可能性もある。つまりDがbに住んでいる場合。
c A | d E | e B | |
a C | b D |
この場合ほのぼのカプのはずのB、Dも少し雲行きが怪しくなる。二人は気の置けない友人同士である。DはBのことならなんでも知っている、と思っている。だがBは密かにAを思っていた。もちろんDには言えない。Bは一人思い悩み、DはDで、友人の顔に、ふと陰りのよぎるようになったことに不安を覚えるのだった。
以上のことから、正答は5である。が、住人の人となりをいちいち想像していては、当然のことながら時間切れである。
思うにこれは、一方的な関係がいけない。鍵を交換すればいいのに、誰かに預けるなどというややこしいことをするから色々こじれるのだ(そうしなくては問題として成立しないのだが)。さらにけしからんのは条件文である。「○は×の部屋を開けられない」という表現など、開けたいけれども開けられない、もどかしい、寂しい気持ちを想像してしまうではないか。
冷静に考えれば単なる試験問題であり、A~Eのパーソナリティはまったく示されていない。にもかかわらず、二階建てマンションの住人の妄想が脳内を駆け巡ったのは、この論理問題の複雑な関係性を、そのまま人間関係に置き換えたからである。判断推理は大の苦手で、いつも苦戦している。この問題も、あっちを立てればこっちが立たず、正答にたどり着いたと思ったそばから矛盾が生じ、おおいに頭がこんがらがった。
もちろん両思いも好きだけれど、片思いも切ないし、友達以上恋人未満や体だけの関係、愛してるけど憎らしい、全員が全員片思いみたいな、どっちつかずの、こんがらがった関係だって大好きだ。ぎりぎりまで人格をそぎ落としているはずの、A~Eの関係性に妄想がほとばしったのは、人格の記述がないからこそ、関係性が浮き彫りになったからである。たぶん。
―――――――――――――――――――――――――――――――
日 時:2010年9月11日(土)13:30縲鰀17:30(開場13:00)