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女は美人、男は三枚目 和田直美
2011.07.25 Mon
女は美人でなければ受け入れられず、男は三枚目のほうが評価が高い。それを実感する出来事があった。
それは、むかし、ファミリー向けの広告物を作る仕事をした時のことだ。
新米の私には、広告に使う写真をストックフォトサービス(数万点の写真から好きな写真を選べるサービス)から選ぶ仕事が与えられた。 男のデザイナーの先輩から『出来るだけ身近に感じられるような写真がいいよ』と言われたのだが、迷った。
身近ってどんな感じだろう?
ストックフォトサービスにある写真は、どんな広告にも使いやすいように「無難に非日常」を醸し出している。 例えば、まっ白いシャツやワンピースを着た家族が、手をつないで、丘を登って満面の笑みを空に向けている写真・・・。例えば、20畳もあると思えるリビングで、テーブルにはキャンドルとフルコースのディナー写真・・・みたいな。どれも、そんな写真ばかりだ。とても、身近には感じられない。
悩んだあげく、私は何千点とある写真をくまなくチェックして、本当に身近にいそうな、美人×イケメンではない、三枚目の男女の写真を選んだ。夫婦二人、地味なグレーのセーターを着て、6畳ぐらいの洋室で、世間話をしているような、実に『身近』を感じられる厳選の一枚であった。
自信満々に、デザイナーの先輩に提出すると、なんと先輩は「男は三枚目でいいけど、女は美人にしろ」というのだ。理由は「男はイケメンだと一般男性の反感をかうから三枚目がいいが、女は美人でないと所帯じみて見えるから、広告向きではない」というのだ。 かなり、ショックであった。
ダメ出しされた後、もう一度写真をチェックしていると、確かに「美人×イケメン」の写真以外は「美人×三枚目」のパターンであった。そんな法則が広告業界にあったとは・・・。 最終的にどんな写真を選んだかは忘れてしまったが、なんとも言えない脱力感が残ったことだけは、覚えている。
今なら言える『そんなの男の目線でしょ。所帯じみて何が悪い。女だって三枚目よりイケメンのほうが好きに決まってる!』と。 まあ、そんなことを考えちゃう自分は、ただのイケメン好きなのかなと思ってしまう、今日この頃だ。
タグ:和田直美