シネマラウンジ エッセイ

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WANの女たちがみる――『女たちの都~ワッゲンオッゲン~』

2013.10.19 Sat

近く公開される新作日本映画『女たちの都~ワッゲンオッゲン~』にWAN映画欄スタッフが寄せた感想です

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シャッター商店街とお祭りと    澁谷文
映画の中心になるのはそれぞれ魅力的ながら、そのなかの誰かに、観る側の自分を重ねられるような普通の女性達。彼女たちの奮闘に圧倒されたり反対したりしつつも次第に影響されていく旦那衆。九州が舞台だと九州男子ばかりが注目されがちですが、それを支えるのは更に強い女達なのだな…と教えてくれる映画でした。

個人的に一番心に残ったのは、夜のシャッター商店街での祭のシーンです。私の地元も、かつて街の中心だった商店街はゴーストタウンのようになっています。 郊外に大型ショッピングモールが出来たことで、人の流れが変わってしまったのです。私も18歳で地元を離れているので、複雑な気持ちでこの映画を観ていました。小学生の頃、楽しみにしていたお祭りは商店街全体が賑やかで心が躍りました。大好きだった玩具店も文房具店も駄菓子屋も今はありません。

この映画の中心は女性達ですが、男性達も勿論、地元を盛り上げたいと思っています。そんな地元を愛する人々がひとつになれば大きな力になる。地方都市のみならず、日本全体が不景気で暗くなりがちですが、これからの未来のために、子供達のために頑張ろう!というメッセージを感じました。

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女たちは元気    山田祥子

  熊本県天草市を舞台にした町おこし物語。女たちは元気だ。愛する自分の町が衰退しているのががまんならない。弓枝(大竹しのぶ)、ゆり子(松田美由紀)たちは、町の活性化のために元遊廓「三浦屋」を料亭に、主婦が芸者に大奮闘する。すると男はブツブツ文句を言う。世間体を気にするのは男。でも女たちは行動あるのみ。婚活、就活を兼ね、都会から若い女たちを呼ぶ。それぞれ問題を抱えていたが、天草の空気が解放する。年齢を超えて、女たちは助け合い励まし合い、夢を実現する。

「ワッゲンオッゲン」は、あなたの家・私の家という意味。田舎はしがらみがあるけど寂しくない。うっとうしいけど情がある。喜びも哀しみも乗り越え、町中、みんなで踊るラストは圧巻だ。元気になる映画である。

onna-miyako-サブ5r 祭のあとで    宮本明子

大竹しのぶをはじめ着物姿の女性たちが、声そろえて「ハイヤ」を舞う姿がうつくしい。漁業が衰退し、ほとんどの店が閉店したというこの街が明るくなる瞬間だ。豪華なキャストに加え、終盤の大通りでのロケーションは圧巻。

女と男、嫁と姑、市民対役所といった二項対立が作品を盛り上げる。もう一歩踏み込んで見たかったのは、この映画の主役たる「女たち」の核となる背景や心理の描写である。たとえば、「不妊」に悩む息子夫婦がとった行動を最後に受け入れる母親のことばが、どのような過程を経て発せられるに至ったのか。孫を切望しつづけ、疎まれてきた彼女の変貌の過程がより細やかにとらえられていれば、「女たち」のリアリティは増しただろう。

終盤、女たちの「祭は自分たちが楽しむためにやる」という思いが具現化する。対立や葛藤をかかえながらも、まずはこうして祝祭的空間に身を投じてみればよいのかもしれない。しかしふと思うのは、祭が終わったそのあとに、いったいどんな未来が待ち受けているのかということだ。

 onna-miyako-サブ6rどこが「女たちの都」?    川口恵子

「女」を武器に女が町の危機を救おうとする設定が1930 年代フランスの名画『女たちの都』(シャルル・スパーク脚本、ジャック・フェデエ監督の名コンビ)を思わせる。が、あちらは町長夫人を演じる監督の妻にして名女優フランス・ロゼエの風格漂う大人の艶笑コメディ。こちらは・・・ダメ男の亭主らをしり目に「花街復活」で故郷「天草」を救おうと気勢をあげる三人の女の計画が無軌道ゆえに頓挫する話。女たちの日常を見せる演出(特に「食べる」という日常の基本場面)も品位を欠く。「大竹しのぶ主演」の看板が泣くだろう。「女性賛歌」を謳いつつ「女/おばさん」を軽んじる台詞や演出も気になる。

という脚本・演出上の問題ゆえに、口を開けば「天草!」を連発する大竹しのぶ演じる魚屋の女房の行動に共感できない。街おこしより夫をどうにかしたらと醒めた目になる。魚屋ならもっと日常的によく働いているだろうに、労働場面もない。

夢破れた女たちが最後に「笑ってりゃいい」とばかりにシャッター街で踊りだす町民総出のラストは、何やら別種の映画のよう。この時の大竹しのぶの一瞬の目の表情に狂気が。ここから再出発する映画を見たい。


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『女たちの都~ワッゲンオッゲン~』

監督:禱映(2012年/日本/103分/DCP/ビスタ)

10月26日(土)よりシネスイッチ銀座他にて全国順次公開

(C)2012「ワッゲンオッゲン」製作委員会

公式HP・映画予告はこちら

カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 男女共同参画

タグ:観光 / 働く女 / 川口恵子 / 日本映画 / 渋谷文 / 山田祥子 / 宮本明子 / 禱映 / 大竹しのぶ / 松田美由紀 / 女と映画 / 主婦