2015.08.16 Sun
販売元:TCエンタテインメント( )
定価:¥ 4,104
Amazon価格:¥ 3,175
時間:97 分
1 枚組 ( DVD )
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「ショート・ターム12」は、何らかの事情で保護者と暮らすことができないティーンエイジャーたちを、一時的に保護する施設。子どもたちはそれぞれ心に傷を負い、不安定な気持ちを抱えて過ごしている。映画は、その施設でスタッフとして働くグレイスと子どもたち、彼女の同僚で恋人のメイソンとの関わり合いを、日々巻き起こる事件を縦軸に、細やかに映しながら、人が生きることの哀しみと希望を描いていく。
こんなふうに希望を心に灯す作品を、久しぶりに見た、と思った。カメラは、幾人かの子どもたちと、自らも深く封印したはずの呪わしい過去をもつグレイスのエピソードを、穏やかな眼差しと安定した距離感でとらえていく。カメラ自体が、セラピストのように。その、人への信頼に満ちたやさしい眼差しを通り抜けて、冒頭と同じ場面を映すラストシーンの余韻が、愛おしいものになる。
だれもが、この映画のように、自分の一部分を託しても良いと思える他者に出会えるわけではない。けれども、人は心の痛みと共に生きていくために、傷を見せてもいいと思う誰かを求めずにはいられない存在だ。グレイスが、誰よりも心を許しているはずのメイソンにどうしても言えない過去の出来事を、自分と同じ痛みを背負った年下の少女ジェイデンに思わず打ち明けるシーンや、その告白を受け止めたジェイデンが、父親の虐待から逃れるために自らを語ることを選択するシーンには、人を変える出会いの力が、小さく、波紋のように広がるのを感じた。ちょっと出来すぎで、これ以上望めないくらいグレイスにとって素敵なパートナーであるメイソンでさえ、彼女を救えない部分があるのも、リアルにうなづける。
雨上がりの青空を一人眺めて、わたしもまた明日からがんばって生きていけるかな、と思えるような作品だ。世界中で50の映画賞にノミネートされ、30以上の映画賞を受賞。
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カテゴリー:新作映画評・エッセイ / DVD紹介