すでに終わってしまった展覧会なのだが、ソウル市立美術館で開かれていた「東アジアのフェミニズム:FANTasia」を見に行った。ソウルのど真ん中の公立美術館で、このような展覧会を開けるとは! フェミニストの館長、キム・ホンヒさんの長年の尽力が、若い世代の学芸員に着実に引き継がれていることを実感する。
同展には、6名の韓国の作家と、中、日、シンガポール、タイ、インドネシア、インドの8名という合わせて7か国14名の作家が参加して、50点余りの作品を出品した。規模からいうと、決して大きくなく、展示室の数も多くなかったのだけど、面白い作品があった。
「日本」から参加した塩田千春の「After Dream」は、純白のドレスに黒い毛糸(?)を張り巡らしたもの(映像も)。唯一の男性作家であるシンガポールのミン・ウォンは、トランスジェンダーや、芸術と女性をめぐる美の脅迫(美しくなくてはならない)を問いかけていた。
私が驚いたのは、カン・アイランが「Re-Voice」という従軍慰安婦を扱った新作を発表していたことだった。カン・アイランといえば、あの美しい光る本が思い浮かぶが、新作は、従軍慰安婦のおばあさんたちの証言映像や、数々の歴史文書・写真資料が展示され、全体が、洞窟を模した(=女の体内)暗い空間での映像インスタレーションだっ、た。この展示の隣は、山城知佳子の「肉屋の女」。残念ながら「肉屋の女」の方はあまり人が多くなかったけど、カン・アイランの展示は人がいっぱいで、若い人たちが証言映像(たぶんKBSとか)を食い入るように見ていたのが印象的だった。でも、残念ながら日本の主流の美術界はこのカン・アイランの新作については、あまり関心を持たないんだろうなあ。
あとは、ハム・キョンアというアーティストが、「立体モナリザ」という作品を出していて、北朝鮮で有名な刺繍のモナリザと並べて、脱北者の姿のインタビュー映像を映していたのだけど、団体さんが場所を占領してしまって、ゆっくり見られず、あまり理解できなかったのが残念。
新聞報道によれば、今回参加者のうち半分が、中国・広東美術館で開かれるFANTasia展に巡回するという。
(北原恵)
*作品の写真は、北原恵撮影
◆「東アジアのフェミニズム: FANTasia」展を企画したキュレーター、ホンイジさんからのメッセージが届きました! ご覧ください。
Message:
I am so happy that Seoul Museum of Art held the
Feminism is no loger just about women now this could be more natural to mention without any hesitation.
From 2015 things are changing in many ways. I hope that we never stop to talk about the issue louder.
Also hope to see the another feminism exhibition in many institution all arount the world.
Thank you and best,
Leeji