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絵本の中の美味しい場面  林 葉子 

2010.01.07 Thu

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<p>料理を通じた他者との濃密な関係についての内藤さんの奥深いエッセイを受けて、私は、絵本の中で描かれた料理の印象的な場面について、いくつか記してみたいと思います。</p>
<p>私には八歳と六歳の息子がいるのですが、私が食事の準備を始めると彼らは、食卓のイスの上に立ち上がり、小さなキッチンのカウンター越しに、嬉しそうにこちらを見つめています。<!–more–></p>
<p>子どもたちは、お父さんやお母さんが料理をしているところを眺めるのが好きです。肉や野菜を切ったり炒めたり、焼いたり揚げたりする作業を、本当はカウンター越しではなく、となりに立って、もっと近くで見ていたいのでしょう。けれど、狭いキッチンに三人が並ぶと身動きがとれないし、火傷やケガをさせてしまうのが怖いので、「こっちに来てはダメ!」と私が禁じているのです。本当は一緒に料理をしたがっている息子たちを台所に入れないのは、息子たち自身の問題ではなく、今のところ、面倒を避けたい私の気持ちと住宅事情の問題だと言えましょう。</p>
<p>けれど、いつか息子たちの背丈が私と同じくらいになって、踏み台がなくても台所に立てるようになったとき、彼らがちゃんと楽しく料理を始められるように、「料理をしてみたい」という気持ちだけは、今から大切に育てておきたい窶披€・</p>
<p>そこで、絵本の出番です。<br />私自身も、子どものころに絵本を読んで「つくってみたい」「食べてみたい」と思った時のことがいつまでも心に残っていて、いまだにその思い出が、現在の自分の料理との向かい合い方に影響を与えているように思えるのです。</p>
<p>絵本の中に出てくる料理で、登場回数が多いのは、なぜかホットケーキ。<br />矢野さんの『ちびくろさんぼ』についてのエッセイをとても興味深く読んで、「私も昔、『ちびくろさんぼ』のホットケーキ、すごく食べたかったなー」と思い出したのですが(ちなみに、『ちびくろさんぼ』絶版問題をめぐっては、ジョン・G・ラッセル著<a href="http://amazon.co.jp/dp/4794800916">『日本人の黒人観―問題は「ちびくろサンボ」だけではない』</a>も参考になります)、私にとって、それ以上に思い出深いホットケーキの絵本といえば、『しろくまちゃんのほっとけーき』(森比左志、わだよしおみ、若山憲、こぐま社、1972年)です。</p>
<p>ホットケーキを作るときの「ぴちぴち」「ぷつぷつ」「ぺたん」「ふくふく」「ぽいっ」という音の表記が、なんとも楽しいこの絵本。</p>
<p>まだ息子が赤ちゃんだった頃、私は一人暮らしをしていたころに使っていた小さなフライパンを、おままごと用として息子に譲り、そのフライパンの大きさにあわせてフェルトを縫い合わせたホットケーキ型のクッションを作って、絵本を読み聞かせながら、子どもたちと一緒に「しろくまちゃんのほっとけーき」ごっこを楽しみました。</p>
<p>お父さんが作るご飯を美味しそうに描いたのは<a href="http://amazon.co.jp/dp/4251001257">『かばくんとおとうさん (かばくん・くらしのえほん)』</a> (ひろかわさえこ・作、あかね書房、1993年)。上の息子が幼稚園に通っていたころ、この「かばくん」のシリーズが大好きで、何度も何度も「読んで!」とせがまれた絵本です。かばくんのお父さんは、なんだか不器用な人(・・・じゃなくて、カバ)なのですが、かばくんのために、一生懸命おにぎりを作ります。</p>
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<p>「14ひき」のネズミのシリーズも、息子たちが一時、夢中になっていた絵本です。兄弟が10匹もいるネズミの家族は、いつもにぎやかで楽しそう。『14ひきのあさごはん』(いわむらかずお・作、童心社、1983年)では、どんぐりの粉から作った「どんぐりパン」と、お父さんの作ったスープがおいしそう。</p>
<p>ところで、この「どんぐりパン」、意外なことに本当に作って食べられるようなのです。</p>
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<p>どんぐり料理の作り方を紹介しているのは、『どんぐりノート』(いわさゆうこ、大滝玲子、文化出版局、1995年)。ここで紹介されているのは「しいのみごはん」、「どんぐりだんご」、「どんぐりせんべい」、「どんぐりチップス」、「どんぐりクッキー」、「どんぐりどうふ」です。<br />この絵本を読んだ息子たちから「どんぐりの料理を作って縲怐vと所望され続けていますが、まだ実際に作ったことはありません。「だって、アク抜きが大変そうだから」と私が言うと、『どんぐりノート』を読んでどんぐりに詳しくなった息子から「スダジイやマテバシイは、アクが少ないんだよ!」という返事が返ってきました。まあ、いつかそのうち、話のネタに、どんぐり料理を作ってみることにしますか・・・</p>
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<p>息子たちではなく、私が大好きになってしまったのは「バムとケロ」の絵本。<br />『バムとケロのにちようび』(島田ゆか・作、文溪堂、1994年)では、お皿に山盛りの「こんがりドーナツ」を作ります。<br />いたずらケロちゃんを息子たちの姿に重ね、ケロちゃんの遊び相手が一段落したところで本を読もうとしたのに結局疲れて寝てしまうバムを自分に重ねて、「あー、なんか親近感・・・」と思いながら、何度も読み返した絵本です。</p>
<p>くいしんぼの母親が選ぶ絵本はくいしんぼが登場する絵本ばかりで、息子たちはすっかり感化され、立派なくいしんぼになりました。<br />「和菓子屋さんになりたい」とつぶやく息子が、どんなスイーツを作る少年になるのか、今から楽しみにその時を待つことにいたしましょう。</p>
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<p><a href="http://wan.or.jp/book/?p=213">次回「グレーテルが赤い実を食べるとき」へバトンタッチ・・・・つぎの記事はこちらから</a></p>







カテゴリー:リレー・エッセイ