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アニメという名の囲い bochan

2010.04.29 Thu

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<p>時に痛みを伴う恋愛物語を「贅沢」とした堀さんのエッセイを引き継いで、私も「贅沢」をテーマにしたいと思う。私にとって「贅沢」な時間とは音楽を聴いている時間だ。もちろん、本に熱中している時間も好きだが、たまに少し考えることをやめてただ音楽を聴いている時間は私にとって一番贅沢な時間だと思っている。</p>
<p>なかなか声を大にして言いにくいことではあるが、私が最近一番よく聞いているのはいわゆる「アニソン」だ(ただし電波系のものはほとんど聞かないが…)。そこで、今回のリレーエッセイではいくつか作品を紹介しながら、なぜ「アニソン」やアニメ音楽に魅かれるのか――その魅力と、またその背後に見受けられる力作用について考えてみたい。<!–more–></p>
<p>CDが売れないと言われて久しいが、「アニソン」にとってそんなことはどこ吹く風。オリコンや音楽情報番組のランキングでは「アニソン」の存在がかなり目につくようになっている。また、2009年には「アニソン紅白」が本家紅白歌合戦の裏番組で開催されるなど、「アニソン」界は今活況を呈している。</p>
<p>「アニソン」と一口に言っても、なかなかその定義は難しいようだ。以前はアニメのOPやEDに使われている曲や、アニメソングを専門にしている歌手の楽曲のみを意味していたようだが、近時ではアニソン/非アニソンの境界は大きく揺らいでおり、J-POPのアーティストも頻繁にアニメのテーマソングを担当するようになっている。声優が歌った楽曲や作中で使用されているインスト(アニメ音楽)、ゲーム音楽なども含められる場合もあるし、アニメソングを専門にしているアーティストならば、アニメとタイアップしていない楽曲も「アニソン」とみなされる場合もある。私がここで取り上げているのはこのようないわば広義の「アニソン」だ。</p>
<p>「アニソン」はジェンダーの視点から見ると興味深い分野だ。正確な数はわからないが、アニソンのアーティストは圧倒的に女性が多い。基本的に、男性のホモソーシャリティが描かれるアニメのテーマソングは男性アーティストが歌い、その逆に女性キャラが数多く登場するアニメは女性アーティストが担当するという構図が存在する。BLや乙女系のアニメが最近増えてきたとはいえ、アニメは未だに男性をターゲットとした娯楽であると言える。「美少女キャラ」たちが描かれる「萌え」系のアニメが多いことから、アニソン界では女性アーティストの存在の方が目につきやすい。</p>
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<p>アニソンの女性アーティストに着目すると、J-POPとの興味深い違いがいくつか存在する。一つ目は、J-POPが10代・20代のアーティストがCDランキングなどでは中心的な存在となっているのに対して、アニソン界にはいわゆる「年齢制限」のようなものが特にないという点だ。30代のアーティストも現役で活躍している。昨年、「アニソン」で初めて紅白出場を果たした水樹奈々や石川智晶、Suara、新居昭乃といった女性アーティストたちの活躍を挙げることができるだろう。</p>
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<p><br class="clearall" />二つ目は女性アーティストの場合、J-POPがいかに歌唱力だけでなく、アーティストの容姿も重視されているかがわかることだ。そもそも「アニソン」のアーティストは生年月日や年齢、また容姿などを伏せて活動していることが多い。私なんかはいい楽曲なら見てくれなんかどうでもいいじゃんと思うのだが、動画共有サイトなどでは時折、「アニソン」を歌う女性アーティストの容姿を揶揄するようなコメントを見かける。しかしそのようなコメントを付与されてもなお多くの(一部の?)ファンから支持を得ているのはやはり、「アニソン」がJ-POPよりもメディアの露出が低く一般的な存在ではないことや、また、「アニソン」は何よりも楽曲が使用されるアニメとの関係性が重視されていることなどがその要因となっているからだろう。アニメから切り離して聴いても素敵な曲だが、アニメとの関係性を考慮するとその魅力が倍増するのも「アニソン」の特徴なのだ。</p>
<p>アニメ音楽ではまた、女性ボーカリストの他にも女性の作曲家も活躍している。現代音楽や映画音楽の作曲家というと、久石譲や坂本龍一などが著名だろう。もちろん、これらの作曲家もボーカリスト同様、映画音楽を主に活動の場にしていても以外とアニメ音楽を担当している場合がある。久石譲も宮崎駿と組んでジブリ作品の音楽を数多く担当しているように。しかし音楽業界に限ったことではないのだろうが、やはりジェンダーの偏りは見受けられる。</p>
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<p>アニメ音楽の女性作曲家と言えば、菅野よう子と梶浦由記を挙げることができるだろう。昨年、<a href="http://amazon.co.jp/dp/4791701968">『ユリイカ』</a>でも特集が組まれた菅野よう子は映画音楽もいくつか担当しているが、やはりよく知られているのは「攻殻機動隊」や「マクロスF」などのアニメ音楽だ。菅野よう子が作る音楽はなんというか幅が広い。西洋的音楽から東洋的な音楽、現代音楽まで手掛けており、本当に音楽の引き出しが多いのだなぁと思う。また、CM音楽も数多く手がけており<a href="http://amazon.co.jp/dp/B0014J59FC">『CMようこ』</a><a href="http://amazon.co.jp/dp/B001U8ZA1A">『CMようこ(2)』</a> にはそれらが収録されている。おそらく、「この曲聞いたことある!」という楽曲が誰でもいくつかあるだろう。<br class="clearall" /><br /><br class="clearall" /></p>
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<p>一方、梶浦由記もアニメ音楽を中心に活動している作曲家だ。女性ボーカルを複数起用したバックコーラスと、ストリングスの美しさが楽曲の特徴といえる。また、コーラスなどでは造語で歌われることが多く、「梶浦語」と呼ばれていたりもする。最近ではNHKの<a href="http://amazon.co.jp/dp/B002E1HJ0W">「歴史秘話ヒストリア」の音楽</a> も手掛けており、耳にする機会のある方も多いかもしれない。梶浦由記の作品の中で私のおすすめは<a href="http://amazon.co.jp/dp/B00005L9AE">『Noir』</a> 。その中でも「canta per me」と「salva nos」は作中でも何度も使われていた曲で、映像と音楽が融合したときのはまり具合が印象的な曲だ。また、初のソロアルバムである<a href="http://amazon.co.jp/dp/B00153MKXG">『FICTION』</a> もほぼ全曲歌が入っているので初めての人でも聴きやすいと思う。</p>
<p><br class="clearall" />菅野よう子と梶浦由記はともにプロデュース活動も行っている。菅野は坂本真綾を、梶浦はkalafinaやFictionJunctionなどのプロデュースをしており、やはり彼女たちもアニソンを中心に活動している。</p>
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<p>インストの曲は人によって抵抗がある場合もあるが、私は小説などを読むとき、ちょっと音楽をかけたいけど歌が入っていると集中できないし…というようなときに聞いたりする。基本的にアニメ音楽はアニメの世界観や雰囲気を反映しており、同じ作曲家でも作品によってがらりと印象が変わったりする。そこがまた面白いところなのだが、読む小説の雰囲気と似た作品を選んで聞きながら読むのが私は好きだ。</p>
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<p>私はロールモデルの存在は非常に重要だと考えている。幼少時はピアノを習っているのは男子より女子の方が多かったと思うのだが、最終的に音楽を専門にして生計を立てているのはいつの時代も男性の方が多いのではないだろうか。音楽が好きで楽器をやっていても、いつの間にかその担い手にジェンダーの差が出てしまう。環境的な要因も当然あるだろうが、ロールモデルの少なさ、つまり女性で音楽業界で活動している人が少ないということもその要因だと思う。</p>
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<p>例えば「映画音楽」というようなジャンルに分類されたときよりも、「アニメ音楽」に分類されると残念なことに聴き手の層がかなり限られてしまうような気がする。今回紹介した様々な女性アーティストたちの存在も階層化された音楽の中でマイナーな「アニメ音楽」と分類されていることによって、社会の中で不可視化されている部分もあるのではないだろうか。</p>
<p>どんなジャンルだろうと、どんな言葉で歌っていようと、良いものは良い。アニソンという「レッテル」を貼らずに、より多くの人に聞いてもらいたいと思う。</p>
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<p><a href="http://wan.or.jp/book/?p=270">次回「「アニソン」からの連想」へバトンタッチ・・・・つぎの記事はこちらから</a></p>







カテゴリー:リレー・エッセイ