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ドゥルシラ・コーネル『イーストウッドの男たち――マスキュリニティの表象分析』

2011.05.27 Fri

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.吉良貴之・仲正昌樹〔監訳〕、志田陽子・星野立子・岡田桂・柴田葵・森脇健介・綾部六郎〔訳〕

本書は、リベラルな政治哲学とポストモダン・フェミニズムの生産的な結合を企ててきたドゥルシラ・コーネルが、クリント・イーストウッドの監督作品のほぼすべてについて網羅的に批評するものです。

そこで分析の軸になっているのは《マスキュリニティ=男性性》をイーストウッドがどのように扱っているかという一貫した問題意識です。
かつての「ドル箱」三部作や「ダーティハリー」シリーズをご存知の方には、イーストウッドといえばまず寡黙なアウトローとしての「男らしい」イメージが思い浮かぶことでしょう。共和党支持者のイコンであり、「草の根保守」としての政治的立場を隠すことのないイーストウッドの姿はその従来のイメージを裏打ちするものです。そういったイーストウッドの映画作品は、フェミニストにとって糾弾すべき対象なのでしょうか?
しかし、コーネルはそうではないと考えます。イーストウッド作品には確かに、悪のシステムに立ち向かう「男らしい」ヒーローが出てきます。しかし、彼らは常に「弱さ」を抱えた存在として描かれています。たとえば仕事ではそれなりに成功していても、家庭では理想的な父親になりきれず悩んでいるというような。イーストウッド映画の男たちは、最初はいかにもハリウッド的なマスキュリニティのステレオタイプを与えられながら、細かいエピソードの積み重ねによって、いつのまにかそのステレオタイプから不可避的にずらされていきます。

その「ずれ」に敏感な男は男らしさの多様なあり方を他者と分かち合うことで生き延び、鈍感な男はありもしないマスキュリニティの「全体性」――「何でも知っている父」というような――を追い求め続けて自滅する。その両極端の間で揺れ動き、奮闘する男たちのドラマとしてコーネルはイーストウッド映画を解読していきます。
ここで重要なのは、マスキュリニティは何かひとかたまりのものではなく、様々な徳性の断片としてのみありうるということです。そのすべてを現実の男性が一身に生きることは決してできません。「イーストウッドの男たち」はマスキュリニティを他の男たちと分け合うだけでなく、その内部においても様々に変容しうるマスキュリニティの断片を生きています。「男たち」は内的な複数性でもあるのです。
マスキュリニティの全体性を現実に生きることができると思い込んでしまうファルス的な幻想こそ、男女双方を巻き込む傲慢と暴力のもとであるとコーネルは考えます。コーネルによるならば、そういった幻想を捨て去り、人間としての《限界》を自覚することによってのみ、他者との豊かな関係性のもとに自己を再創造する《イマジナリーな領域》が切り開かれます。そして、イーストウッドはその一般的なイメージとは裏腹に、マスキュリニティの《限界》にどこまでも自覚的な映画監督として捉え直されることになります。
本書は以上のように、コーネルのこれまでの基本的な主張を具体的な映画作品に即してわかりやすく論じるものであり、いわばコーネル自身によるコーネル入門書として読むことができます。また、近年ますます難解になりつつあるイーストウッド作品に戸惑いを覚える人々にとっても一貫した視座を提供するものでしょう。(監訳・吉良貴之)

【目次(カッコ内は主に扱われている作品)】
序文・謝辞
イントロダクション シューティング・イーストウッド
第一章 決戦を描くこと (『荒野のストレンジャー』『ペイルライダー』『許されざる者』)
第二章 分身との舞踏 (『タイトロープ』『ザ・シークレット・サービス』『ブラッド・ワーク』『ダーティハリー4』)
第三章 拘束する絆 (『マディソン郡の橋』)
第四章 精神の傷痕 (『パーフェクト・ワールド』『目撃』『ミリオンダラー・ベイビー』)
第五章 『ミスティック・リバー』における復讐とマスキュリニティの寓話 (『ミスティック・リバー』)
第六章 軍隊と男らしさ (『アウトロー』『ファイヤーフォックス』『ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場』『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』)
第七章 承認の影(『ホワイトハンター ブラックハート』『トゥルー・クライム』『バード』)
結論 ザ・ラストテイク

吉良貴之「マスキュリニティの死後の世界」
仲正昌樹・あとがき








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