
桃太郎、浦島太郎、金太郎、ケータイのCMではないですが、昔話ときいて、あなたが思い浮かべる主人公は、男性が多いのではないでしょうか。女性が主人公の場合でも、かぐやひめのように最後はいなくなってしまったり、シンデレラや白雪姫のように、ひかえめでおとなしく、辛い仕打ちにも堪え続ける女性ではないでしょうか。
これまで、広く知られてきた昔話は、そうしたものが多かったですが、実際に語りつたえられてきた昔話はもっと豊かで、へこたれずに自分なりの幸せをつかむ、さまざまな女性たちが登場します。そんな主人公が登場する昔話を絵本にしたシリーズをこのたび刊行しました。
再話をしたのは、作家の中脇初枝さんです。映画化もされた『きみはいい子』や、『世界の果てのこどもたち』など、話題作を次々世に送り出す一方、小さな頃から昔話が好きで、筑波大学では民俗学を専攻、昔話を各地で聞きとり、再話し、語ってきました。
中脇さんは、子どもの頃から「どうして自分のような女の子が主人公の昔話はすくないんだろう」と疑問を感じていたそうです。現在でも残念ながらその傾向は続いていますが、これは、明治期以降、出版業界が、男性中心だったことも関係しているのでしょう。
そうした現状の偏りをふまえ、さまざまな女の子が登場する昔話を世界と日本から集め、絵本にしました。
昔話の主人公は、末っ子など小さく弱い存在であることも多く、本人の力だけでなく、偶然や周りの助けで、幸せになります。それは、実際の社会でもおなじではないでしょうか。
「きっと大丈夫」と人を勇気づけてくれる昔話を、子どもたちに、また大人のみなさんにも読んでほしいと思っています。
現在、5タイトルを刊行しています。
『ちからもちのおかね』(絵:伊野孝行)
高知に伝わる、ちからもちの女の子が大活躍するおはなし。成長すると腕利きの猟師になって天狗を追い払い、子どもを産んだあとも化け物を退治します。
『わたしがテピンギー』(絵:あずみ虫)
ハイチに伝わる、ひらめきと友達の助けでピンチをきりぬける女の子のおはなし。女の子たちが「わたしもテピンギー」と名乗って、友達を守るところが痛快です。
『マーヤのさるたいじ』(絵:唐木みゆ)
沖永良部島に伝わるおはなしで、さるに桃をだましとられたマーヤが、おにぎりを作って、仲間とさるたいじにむかいます。泣き寝入りしない女の子が主人公です。
『花をさかせたがらない小さなキャベツ』(絵:うえのあお)
女の子がキャベツの水やりをことわると、お母さんは子犬や小枝、火や水に頼みに行きます。話がどんどんおおごとになっていくのを楽しむおはなし。
『おだんごころころ』(絵:MICAO)
おだんごを追いかけた女の子が、たどりついたのは鬼の家! 鬼の家に引っ張りこまれても、すきを見て逃げだし、宝を持ちかえる女の子のおはなし。
(さがわ ともこ・偕成社編集部)
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