『痴漢を離さないで』
作成日:2016-02-18 14:33:17
對馬果莉
このあいだ、わたしの目の前で痴漢加害が起こりました。先週土曜のお昼前、渋谷に向かう電車の中での出来事です。電車内は、休日を街で過ごす人や、休日も街に働きに行く人でいっぱいでした。自分の体の周囲が、四方すべての人に密着するような込み具合です。
「なにしてんの?」という、緊迫した声が聞こえてきました。わたしの斜め左前にいる子が、その子の後ろにいる人(私の左隣にいる人)に対して「おしつけてんのわかってんだよ」と、言いました。声をあげた子のつり革を掴む手が震えています。
その子に加害を指摘された人は、最初「はぁ?」と言ってとぼけたような表情をしていましたが、すぐに「ふざけんなよ」と怒り出しました。その子が、「腰をおさえて、おしつけてたじゃん!なにとぼけてんの?立ってんじゃん」と、怒り出した人の股間を指して、その子が言いました。手はやはり震えています。まわりの乗客も「立ってる、立ってる」と、怒り出した人の股間を指をさして言っています。
「次(渋谷駅で)、降りたら駅員室行くからね」とその子が言うと、勃起しながら怒っている人は、大きなため息を吐いてうなだれました。わたしは痴漢加害の一番近くにいたので、何か力にならなくてはと思い。「わたしも駅員室、一緒にいきます!」とその子に伝えると、なぜかその勃起している人が、「そうですよねぇ、そうですよねぇ」とわたしに同意を求めてきました。「はぁ(゚Д゚)?」という感じでしたが、勃起者はわたしが味方になったと勘違いしたようです。
幸いなことに、わたしの他にも駅員室に一緒に行ってくれるという目撃者が2人いました。すると、勃起者が、「ごめんね、ごめんね」と謝りだしたので、一体この人の脳内はどうなってるのだと驚愕しました。結果として、勃起者と、声をあげた子、その一部始終を目撃した3人の目撃者で駅員室に向かうことになりました。
わたしは、勃起者が逃げないように、腕をつかんで駅員室に行こうとしました。すると、「わかってますから、行きますから」とわたしに言い、勃起者は腕を離すように促してきました。後で後悔することになりますが、わたしはこの時、痴漢を離してしまったのです。痛恨のミス。
ちょうど駅員室に一番近い改札にさしかかったとき、今までうなだれていた勃起者が、なんと猛ダッシュで改札を駆け抜けました。一瞬何が起こったのか分かりませんでしたが、逃げられたのです。目撃者の一人である男性が、すぐに後を追いかけます。しばし呆然とした後に、「『わかってますから、行きますから』と言っていたのは、逃げるためだったんだ。×××!!!」と言葉にならない怒りがこみ上げてきました。
そこから、駅員室で事情を説明し、交番で事情を説明し、被害届を出すことに決めたので、そのままみんなで一緒に近くの警察署まで行きました。(パトカーが迎えにきたので、初めてパトカーに乗りました!)。
被害届を出すまでの一連の流れの中で、「なんやねんな!」と思ったのは、事情を聞いた駅員さんが「警察に行くかどうかは、ご本人の意思です、どうしますか?」と言ってきたり、事情を聞いたお巡りさんが「被害届を出すかどうかは、ご本人の意思です、どうしますか?」と言ってきたりしたことです。
まるで警察に相談したり、被害届を出すことを遠のかせることを言っているように感じました。被害届を出すことを、痴漢被害を受けた人だけの責任にしようとしているようです。
もし、痴漢撲滅に本当に取り組むというのであれば、駅員さんもお巡りさんも、「被害届を出すのはご本人の意思ですし、ご予定もあってお忙しいところ大変恐縮ですが、痴漢撲滅を目指しています!加害者逮捕に是非ご協力いただけないでしょうか?」という意気を見せるべきです。
イギリスにはこんな痴漢撲滅CMがあるくらいです。これだけ簡単に通報ができたらどんなに素晴らしいでしょう。
「痴漢されたら通報」促す動画が威力 イギリス、逮捕が3割増 (ハフィントンポスト)
http://m.huffpost.com/jp/entry/7076028
ただ、被害届の聴取を受けているときには、痴漢事件を担当する訓練を受けた刑事さんが丁寧に対応してくれたのは良かったです。また、目撃者の男性と一緒に聴取を待っている時に、「逃げられて悔しいね」と、この悔しさを共有することもできました。
なんと、いま「痴漢は俺の敵!」という痴漢抑止バッチを制作して、配布しようとしている男性の方がいます。素晴らしい取り組みだと思います。3月12日の土曜日に、新宿もしくは渋谷で、無料配布するそうです。お近くの方は、是非参加されたらいかがでしょうか?
男性用「痴漢抑止バッジ」、配ります。(きょばnote)
https://note.mu/kyonghagi/n/n84ee9a149bcf
「痴漢は俺の敵!」と思い、実際に行動に起こす人がいることがどれだけ、勇気づけられることか、目撃者の男性にお伝えしたことは言うまでもありません。
今回の色々なことを学びましたが、一番の教訓は、
「痴漢を離さないで」
これに尽きます。
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