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国家というシステムの中からこぼれ落ちた存在に思いを寄せる 『無国籍』 陳天璽

2011.10.19 Wed

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.本書の冒頭では、著者みずからの「国境のはざまに立たされ、どこの国にも入れない経験」が紹介されている。両親とともに日本から台湾を訪れた21歳の著者は、「祖国」と思っていた台湾からはビザがないことを理由に入国を拒まれ、生まれ育った日本に送り返されると、今度は再入国の期限が切れていたために入国できないと言われるのである。

陳天璽氏は、1972年の日中国交正常化により日本が中華民国・台湾との国交断絶を決めたことで、「無国籍」の選択をした華僑の一家の末娘である。彼女は日本になじめず、世界に出ていく中で、「無国籍」ゆえにいくつもの理不尽な困難にぶちあたり、やがて「無国籍」をテーマとした研究者の道を歩むこととなる。本書では陳氏の葛藤の日々とともに、さまざまな無国籍者の問題が取りあげられている。

かつてわたしがドイツに留学していたときに、留学生とドイツの学生たちによるゼミ合宿に参加したことがある。会場はオーストリアの国境から数十キロしか離れていない小さな村だった。あるとき参加者たちの間でインスブルックまでの遠足が企画された。当日になってわたしは何人かの留学生が来ていないことに気付いた。国境を越えることについての自らの想像力の欠如を思い知らされた出来事である。EU域内を自由に移動できるシェンゲン協定の実施の少し前のことだ。(lita)








カテゴリー:わたしのイチオシ / lita

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