特集「多様性をバージョンアップする」

子どもにまつわる最新トピックの論稿をあらゆる領域から集めた年刊の総合白書です。2026年版をもって62冊目。毎年冒頭に特集コーナーがあり、今年のテーマは「多様性をバージョンアップする」です。
 「みんなちがって、みんないい」。多様性を尊重することは、いまや学校教育をはじめ社会の重要な理念になっています。外国ルーツ、障害、ジェンダーやセクシュアリティなど、これまで見えにくかった子どもたちの困難が可視化され、支援につながるようになったことは大きな前進です。しかし、「違いを認めること」と「違う人とともに生きること」は同じではありません。本特集では、理解できない他者とどう向き合うのか、価値観の異なる人々がどうすればともに生きられるのかを考えます。
 〈原理と構造〉では、哲学者・永井玲衣さんへのインタビューをはじめ、子どもの生きる場や日本社会の構造から多様性を考えます。〈文化的アイデンティティ〉では、多文化共生、在日コリアン、「単一民族」神話と歴史教育を、〈ジェンダーアイデンティティ〉では、理工系女性、ジェンダーをめぐる社会的反発、性別違和のある子どもの経験を取り上げます。また、地方圏の専門学校生の学びを通して、地域や進路の違いにも目を向けています。
 〈多様性に関わる教育〉では、障害児教育、人権教育、校則づくりを取り上げ、理念だけでなく、学校という具体的な生活の場で多様性をどう実現するかを考えます。さらに、食の多様性や「スマホを持たない大学生」という身近なテーマも収録されています。
 多様性をめぐる問題の背景には、貧困や格差、孤立、将来への不安もあります。そうした不安が、外国人や生活保護利用者、障害者などへの差別や排外主義につながることもあります。だからこそ、多様性を尊重するとは、他者を「理解する」だけではなく、異なる人と出会い、協働し、葛藤しながらも「違う誰かと一緒にいても、自分の居場所は失われない」と感じられる経験をつくることではないでしょうか。
ほか、ジェンダー・セクシュアリティ関連では、学校におけるジェンダー不平等性が未だ残存する問題や、若者が平等意識をもちながらも就労環境の中で伝統的性別役割観へと適応させられていく状況、などを分析した論稿もあります。
 違いを無条件に称賛するのでも、正しい理解を押しつけるのでもなく、違いを抱えたまま、ともに生きるための条件を考える。本特集が、そのための「多様性のバージョンアップ」を考えるきっかけになればと思います。

【もくじより】
《特集》「多様性をバージョンアップする」
〇インタビュー 多様であるわたしたちが聞きあうこと 永井玲衣
〇子どもの生きる場から考える多様性の尊重とは 中西新太郎
〇日本における多様性理解――日本型多様性の問題点 池谷壽夫  
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〇ふじみの地域多文化共生の取り組みと子どもたち 石井ナナエ 
〇生が軽視されない/尊重される社会をめざして 呉永鎬
〇『単一民族』神話と歴史教育 星 瑞希 
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〇なぜ今、理工系に進む女性が増えたほうがいいのか 横山広美 
〇性別違和のある子どもが「問われる側」から抜け出すということ 遠藤まめた 
〇匿名の「やめてほしい」という言葉の背景にあるもの 松岡宗嗣
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〇地方圏における専門学校生の学びをとらえなおしていく 植上一希 
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〇良質なインクルーシブ教育のために――障害児教育の蓄積から学ぶ 山中冴子 
〇子どもとともに、葛藤とともに 神代健彦 
〇多様性を保障する校則づくり 根本 藍 
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〇まずは知る・理解することから――子どもと食の多様性 岩本亜里沙 

《小特集》「いま、子どもの声を〈きく〉」
〇いま、必要とされる子どもの権利擁護機関 間宮静香
〇私たちの声で変えよう! 平和な未来へ 西江めぐみ

《子ども最前線》
〇クマ出没による子どもたちへの影響 野田恵 
〇「不登校対応に関する教員全国調査2025」から見える不登校の今 朝倉景樹
〇「いのちのとりで裁判」、第2ラウンドの闘いへ 小久保哲郎

《子どもをめぐるこの1年》
• 毎年10の領域から定点レポート
 いのちと健康、家庭、福祉、保育・学童保育、司法、学校、地域社会・まち、文化、メディア、ジェンダー・セクシュアリティ

子ども生活年表/2025年に子ども・若者のあいだで流行ったモノ(カラー)

◆書誌データ
書名 :『子ども白書2026』
著者 :日本子どもを守る会(編)
頁数 :192頁
刊行日:2026/08/15
出版社:かもがわ出版
定価 :3080円(税込)