
男性ばかりの政治に「さよなら」するには
「男性政治」とは、男性だけで営まれ、男性だけが迎え入れられ、それを当然だと感じ、たまに女性の参入が認められても対等には扱われない政治をいいます。これは「政治」に限ったことではなく、日本社会のさまざまなレベルで見慣れた光景であり、その根深さに辟易します。ちなみに、男性政治を拒否する男性も、自ら組み込まれようとする女性も存在することは言うまでもありません。
なぜ「男性」政治を論じるのかというと、それは、女性に焦点を当てると、女性自身がもっと努力しなければならないかのような印象を与えるからです。変えるべきは、現在の権力構造、つまり男性政治の構造である――。そうした視点から、本書で三浦まりさんは、ミソジニーがはびこる「ジェンダー平等後進国・日本」の現実を論じ、どうすれば政治を変えることができるのかを考えていきます。
女性の政治参画をめぐっては、「女性議員が増えるとどんなメリットがあるのか」という問いをしばしば見かけますが、この問いを発するのはどんな人なのか、ちょっと思い浮かべてみてください。そうした問いに、己のマジョリティ性を問題視することなく、既存の権力構造にマイノリティを「包摂してあげよう」という意図を感じるとき、三浦さんは回答を拒否し、逆に「男性が圧倒的に多いことのメリットは何ですか」と聞き返すそうです。質問者はたいてい虚を衝かれて、答えることができないとか。
日本では、長いあいだ男性が政治を占有し、女性が抱える課題を正面から扱ってこなかったことが、女性を政治から遠ざけてきました。それでも近年、#MeToo、#KuTooなどをはじめとして、女性であることを意識し、異議申し立てを行う運動が広がっています。これらの運動は、「民主主義」を名乗る日本の議会政治(議会制民主主義)の機能不全を補うかのように、直接民主主義を実践するものでした。その広がりには目を見張るものがありますが、残念ながらまだ政治の変革にはつながっていません。
こうした運動のエネルギーを議会制民主主義の再建に接続し、男性政治に「さよなら」するには……? 三浦さんの回答を、ぜひ本書で確認してください。
◆書誌データ
書名 :さらば、男性政治
著者 :三浦まり
頁数 :298頁
刊行日: 2023/1/20
出版社:岩波書店
定価 :1,078円(税込)
https://www.iwanami.co.jp/book/b618313.html
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