現代中国の男と女、親と子の息遣いが聴こえる本

本書は、普通の新世代中国人(主に一人っ子政策以降に生まれた若者世代で、「シン・中国人」と名付けた人々)の悩める姿を描き出すことによって高度成長期を経て「踊り場」に至り、コロナ以降更に見えにくくなっている中国社会を内側から伝える。
長年の閉鎖状態を破り、類を見ない急激な経済成長を遂げた中国社会では古さ(儒教的伝統)と新しさ(功利主義や競争主義)がモザイク模様のように混在している。こと結婚や恋愛に関しては家を重視する親世代とグローバルな時代に覚醒した息子・娘世代とで大きなジェネレーションギャップが存在する。
本書は、世界的現象でもある萎む結婚、少子化や恋愛離れに関し、現代中国特有の親子間や男子と女子の特異な関係など様々な中国社会の側面を紹介。

また、結婚と恋愛に関する数々の話題、例えば、農村に残る伝統的結婚観に根差した高額結納金が、近年になってキラキラの都市部でも復活したのはなぜか?億ションも珍しくない超高価住宅事情は如何に今日の結婚に影響を与えているのか?自意識が敏感になって増大する「気まずさ」や不眠に悩み、「成功の手段」として美容整形に走る現代の人々の心理などについても扱う。

さらに、シン・中国人たちの具体的な結婚と恋愛の変遷やあり方を縦軸に、「一人っ子政策」「戸籍」「不動産高騰」「農村と都市の格差」など一般的な解説では捉えにくい中国の社会システムとその背後にある考え方を具体的かつ立体的に解説している。

今後中国に関わる方はもちろん、現代化する社会の変化と親子や男女のあり方に興味のある読者にもおすすめだ。

◆書誌データ
書名 :シン・中国人
著者 :斎藤 淳子
頁数 :256頁
刊行日:2023/2/9
出版社:筑摩書房(ちくま新書)
定価 :946円(税込)

シン・中国人 ――激変する社会と悩める若者たち (ちくま新書 1710)

著者:斎藤 淳子

筑摩書房( 2023/02/09 )