生活の中のフェミニズム
 著者の小川たまかさんは、性暴力やジェンダーをテーマに長年活動するフリーライター。本書は一人のフェミニストとして、著者のプライベートな話題から時事問題まで、さまざまなトピックについて書き下ろしたエッセイ集です。

 結婚生活から考える夫婦別姓。共働きだった両親の思い出から考える家事とジェンダー。政治家の差別発言、ネット上で吹き荒れる女性やマイノリティへのバッシング。そして自身の身体と人生をめぐる想い……。書き留めなければ忘れられてしまう日常のなかの違和感、社会の断片を、著者は「なかったこと」にせず声をあげつづけます。

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 女性蔑視も女性差別もいくらでもやらかすし、それが当たり前。だけどそれは国内だけで内向きにやっていいことで、海外にバレた時点でアウト。国内の女の抗議はうぜえから潰すけど、海外からの顰蹙はヤバくなる前に「反省してます」する。そういう本音と建前の使い分け、教科書に載っているわけでもないのに自然と踏襲されているのはどういうことなのか。よくわきまえておられる、ということか。 ――「お前らの本音と建前」

 世の中はフェミの活動のおかげとは絶対に認めないラインを守りつつ、フェミの言うことを取り入れざるを得ない局面もある。そんなことの繰り返しでちょっとずつ前に進んでいる。と、思いたい。 ――「フェミと選挙」

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 社会問題を切り取る視点は鋭く、しかし思わず笑ってしまう箇所もあり、著者ならではの魅力的な語り口も本書の読みどころです。日々のニュースにモヤモヤや憤りを感じている人、これからフェミニズムに出会う人にも、ぜひ手にとっていただきたい1冊です。


◆目次
はじめに

1 夫婦って、家族って
  なんで結婚したんだろう
  ダブルインカムツーキッズ
  祖父の話
  夫の家事能力が高い

2 日本社会がよくわからない
  お前らの本音と建前
  祟りと滅び
  男の本能にエビデンスはいらないんだって
  海の近くの裁判所
  16年後の判決

3 フェミと政治とインターネット
  エモよりデモを(1)親ガチャ・DHC問題
  エモよりデモを(2)「女性はいくらでもウソをつける」
  エモよりデモを(3)「ホームレスデート」と、暴力と排除に抗議するデモ
  ヴィーガンとフェミニストと、なりすます人
  特定した話
  フェミと選挙

4 私の身体と人生と
  毛を抜く人生
  自分の具合悪さは自分にしかわからない
  占いからの怒られと抵抗
  おたまさんと、恋愛のない生活

おわりに



◆書誌データ
書名 :たまたま生まれてフィメール
著者 :小川たまか
頁数 :200頁
刊行日:2023/5/12
出版社:平凡社
定価 :1980円(税込)

たまたま生まれてフィメール

著者:小川 たまか

平凡社( 2023/05/12 )