女の本屋

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無理の理由に気づく 『無理』奥田英朗

2012.08.17 Fri

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.疲弊している地方都市・ゆめの市で繰り広げられるフツーの人々による群像劇なのだが、この中で気になるのは、生活保護を得るために子どもの父親の養育費支払い能力がないように偽装させようとする若い母親、という設定だ。ああ、生活保護不正受給バッシングのさなかの、このタイミングで不正受給のシングルマザーが登場って、悪趣味・・・

だって、本当は、日本のシングルマザーって世界のシングルマザーの中でも際立って労働力率が高いのに。ミーンズテスト(資力テスト)や私生活を監視するかのような社会のまなざしの中で、ワーキングプアや過労状況でありながらも、生活保護を申請することすらためらっているシングルマザーが多いのに。性別役割分業体制の中で、矛盾を一身に受けているのがシングルマザーなのに。

人気作家による新作文庫では、そんな事実はお構いなしに、不正受給に励もうとするシングルマザーの姿しか出てこないなんて?

と憂欝になりつつ読み進めていって、はたと気づくのは、地方都市の被弊が人心を荒廃させているという事実だったりする。新興宗教にすがらざるを得ない老いを間近に迎えようとする女性や、誘拐されている時点から解放されたのちのうわさを想定して苦しむ女性。生活保護の獲得にやっきになるシングルマザーも、現在の疲弊する地方都市における女の矛盾を背負っている姿ではある。

ストーリー展開のうまさもあって、シニカルな目で描かれた物語から、現状におけるジェンダーの問題が浮かびあがってはいるのだ。浮かびあがった社会的矛盾に多くの人が気づきながら読んでくれたらいいなあ・・・と願ってしまう一冊です。(momiji)








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タグ: / シングルマザー / 子育て / 性別役割分業