・大谷恭子「買春の可罰化に向けて」
 障害者差別事件、永山則夫連続射殺事件、アイヌ民族肖像権裁判、永田洋子連合赤軍事件など、一貫してマイノリティの権利擁護の裁判の弁護をしてきた大谷恭子弁護士最後のメッセージ。
 行き場のない少女たちの生きる場若草プロジェクトで少女たちともに生活をしてきて見えてきた売春をする少女たちの背後にある日本の闇--売買春の問題に切り込んでたどり着いたのは買春するものへの実効性のある罰則である。
・浅倉むつ子「女性差別撤廃委員会は、性売買をどうとらえているか」
 売買春を国際社会はどうとらえているか。一筋縄ではいかない苦渋の国際状況を冷静に見る。執筆者は労働法、ジェンダー法の研究者である 。

「セックスワークNO!」の立場で原稿を書き残すと大谷さんが決意したのは、余命宣告を受けてからだった。時間と競争しながら病室でキイを打つ大谷さんに伴走した日々。やっと書き上げた原稿に浅倉さんが最小限の補筆をして、初校が出た日に大谷さんは旅立った。最後の気力を振り絞った本稿が一人でも多くの人の目に触れてほしいと願う。

 本誌はほかにも「日本のジェンダー指数」の問題や「トランスジェンダーの尊厳」についての興味深い論稿が載っているが、なにせ値段が高いので図書館などでぜひ一読していただきたい。
(満田康子)