
育児とキャリアの両立を阻む構造を明らかにする
本書は、育児経験のある女性医師26名へのインタビュー内容から、育児とキャリアの両立を阻む構造を分析している書籍です。
本書では、キャリアパスに従って、対象者を次の4つのパターンに分類しています。
・一貫して常勤医を継続した女性医師
・非常勤に転換後、常勤医へ復帰した女性医師
・非常勤に転換後、常勤医へ復帰しなかった女性医師
・未就学児の育児中で、進路がまだ定まっていない女性医師
当事者の語りを分析すると、パターンごとに共通する構造が浮かび上がってきました。
職場領域・家庭領域の環境、そして本人の持つジェンダーバイアスやキャリア観…これらが関わりあって、一定の構造を形成しています。
本書は著者の内藤眞弓氏の博士論文を一般向けに組み立て直したもので、インタビュー内容は2015年頃のものとなっていますが、むしろ現在の社会の流れとしては、2010年代の女性医師たちと同じ問題が一般就労女性、そして男性にまで波及していると思います。
育児とキャリアの両立ということを考えたとき、現代でもまだまだ個人の努力や能力に還元する語りが多くあります。本書を読むと、本人や周囲の環境(幼少期からさらされてきたジェンダーに関する言説、職場領域・家庭領域のケア資源など)が織りなす構造こそが、キャリア、ひいては本人の生涯を左右し得るということが分かります。
医師という専門職へのインタビューではありますが、彼女たちがぶつかる問題は、現代の日本で働く多くの女性が直面するものでもあります。
ハイキャリアな医師という道を選んだ女性でさえ、時には意にそぐわずキャリアを諦めることがあります。その事実の裏にこそ、個人の努力だけでは埋められない構造的な問題が横たわっています。
書名:育児とキャリアの共存戦略-女性医師26名が語るジレンマ構造-
著 者:内藤眞弓
頁 数:240頁
刊行日:2025年11月15日
出版社:キーステージ21
定 価:2,178 円(税込)
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