
ポジショナリティによって可視化する社会的関係
本書では、集団間の権力関係が個人間にポジショナリティの相違として現れる様相、集団的利害に基づいた集団的な責任は個人にどのように分有されているか、被抑圧者がポジショナリティの曖昧化に協力させられる機微と手法、ポジショナリティを変更し差別や抑圧を解消する責任の所在と様態、などの論点について集中的に論じている。また本書では、ポジショナリティを曖昧化する利益(個人的な利益)を焦点化する。ポジショナリティを問題化しないことによって、集団的利害の個人への分配は継続する。そのため抑圧側の人びとは、自らの集団的利害を棚上げした言動や、境界の無効化といった「混乱の種」を撒く。さらに「強制された選択」として被抑圧者がそれに協力させられることも起こる。
そして本書で最も重要な点は、たとえ相互に会ったこともなく名前も知らない間柄であっても、日本人と沖縄人はポジショナリティと集団的利害の分配を通じて深く結びついているという事実である。無関係な「赤の他人」ではないのである。そこには強い社会的結合が存在している。その事実をポジショナリティは明示する。この点は女性と男性の性差別的関係においても同様だろう。このような一般性・応用可能性から、ポジショナリティや権力・差別に関心のある人に、ぜひ手に取ってもらいたいと願う。
◆書誌データ
書名 :『ポジショナリティと<日沖関係>――沖縄と日本の権力構造、集団的利害と責任の様態を問い直す』
著者 :池田 緑
頁数 :480頁
刊行日:2025/11/30
出版社:明石書店
定価 :3740円(税込)
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