2013.05.21 Tue
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.精緻で鋭利な思考で、21世紀のフェミニズム批評を牽引した竹村和子さん。2011年12月のその急逝の報は、大きな衝撃を与えました。ジュディス・バトラーを始めとするフェミニズム理論・現代思想のすぐれた紹介者であり、『フェミニズム』『愛について』などの書で自らの思索を広げ深め、海外の第一線の思想家とも対等に議論できる希有な人材として、国際的にもさらなる活躍が期待されていた中での訃報でした。
本書は、その遺稿を集めたものです。著者の関心の広がりと深まりと軌を一にする、「セクシュアリティ」「フェミニズム理論」「バトラー解読」「生政治と暴力」の4部に分かれ、資本主義と異性愛主義の抜き差しならぬ関係を精神分析を援用して曝き、生政治にあまねく覆われた現代社会における、フェミニズムの困難な位置に迫ります。
バトラーら欧米の理論家と濃密な対話を重ねた著者は、翻訳の可能性=不可能性をも見据えていました。それでもなお、「境界」の危うい裂け目を生きる夢を棄てませんでした。思索がそのまま自らにはね返る息詰まる場で、読み・書き・考える意味、性と生のありようを、根底まで突き詰めようと格闘した言葉の数々がここにあります。
編集は、上野千鶴子さん。竹村さんの仕事の最高の理解者が、残された約50篇の論考から16篇を精選し、「竹村和子とは誰か?」――竹村さんの思索のあとを犀利に解き明かしながら、深い哀惜の情のこもった竹村和子論を書いています。(上野さんの解説はこちらから読めます)
▼目 次
Ⅰ セクシュアリティ
第一章 「資本主義社会はもはや異性愛主義を必要としていない」のか
—「同一性の原理」をめぐってバトラーとフレイザーが言わなかったこと—
第二章 「セックス・チェンジズ」は性転換でも、性別適合でもない
—パトリック・カリフィア他『セックス・チェンジズ』解説—
Ⅱ フェミニズム理論
第三章 フェミニズムの思想を稼働しつづけるもの
第四章 修辞的介入と暴力への対峙
—〈社会的なもの〉はいかに〈政治的なもの〉になるか—
Ⅲ バトラー解読
第五章 異性愛のマトリクス/ヘゲモニー
—『ジェンダー・トラブル』について—
第六章 いかにして理論で政治をおこなうか
—『触発する言葉』訳者あとがき—
第七章 生存/死に挑戦する親族関係 — セクシュアリティ研究の理論展開
—『アンティゴネーの主張』訳者あとがき—
第八章 未来のバトラーとの対話に向けて
第九章 デリダの贈与 — 脱構築/ポリティックス/ポスト性的差異
第一〇章 理論的懐疑から政治的協働へ、あるいは政権と理論
—サラ・サリー『ジュディス・バトラー』訳者あとがき—
Ⅳ 生政治と暴力
第一一章 生政治とパッション(受動性/受苦)
—仮定法で語り継ぐこと—
第一二章 マルチチュード/暴力/ジェンダー
第一三章 暴力のその後……
—「亡霊」「自爆」「悲嘆」のサイクルを穿て—
第一四章 生と死のポリティクス — 暴力と欲望の再配置
第一五章 「戦争の世紀」のフェミニズム
付 論
「翻訳の政治」 — 誰に出会うのか
初出・原題一覧
竹村和子主要著作
(編集者 清水愛理)
カテゴリー:竹村和子さんへの想い / シリーズ