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「ふぇみん」2026年5月25日号で、自身初のドキュメンタリー映画「遊歩 ノーボーダー」を世に出した淺野由美子監督のインタビューを読んで「これは見に行かなくては!」と大阪公開初日の5月30日、第七藝術劇場に足を運んだ。この映画の主人公である安積遊歩(あさか・ゆうほ)さんが「私の映画は(本作のプロデューサーである藤野知明監督の映画)『どうすればよかったか?』への応答でしょ」と喝破した、という淺野監督の言葉が載っていたからだ。「どうすれば…」を見た後のモヤモヤ感が長く尾を引いている私は、どういう意味合いの<応答>なのか、ぜひ確かめたいと思った。
冒頭はコロナ禍の講演シーン(2022年3月6日、北海道江別市)。大テーブルに横になったまま、マイクを持ち、テンポよく小気味良い語りを繰り出す遊歩さんに、私は完全に魅了されてしまった。淺野監督はこの日、新しく手に入れた4Kカメラに慣れようと撮影させてもらっていたそうだが、遊歩さんの話に引き込まれ、被写体にぐんぐん近づいていく様子がそのまま映っている。講演後、遊歩さんに近づいて「あなたのドキュメンタリーを撮らせてください!」と言ったのが、本作の始まりだったそうだ。その時に監督が感じたであろう出会いのときめきが、映画の様々な場面から生き生きと感じられる。私自身も淺野監督と同じように、遊歩さんの魅力的な語りと豊かな表情に引き込まれ、「この人はいったい、どんな人なのか」どんどん知りたい気持ちが高じて食い入るように映画を見ていた。82分見終わった後は、遊歩さんの語りが唐突に終わってしまったことを寂しく感じるほどだった。
安積遊歩さんは1956年福島市に「骨が弱い」という特徴をもって生まれた。母におぶわれて4年生まで通った小学校、療育園と養護学校での生活(その時に性暴力にも遭った)、青い芝の会との出会い、親元からの自立と同棲、米国留学で学んだピアカウンセリング、妊娠と出産……。療育園での経験から「自分の人生は自分でコントロールしなければ酷いことにあう」と学んだ遊歩さんはその後、徹底した当事者主権を貫いてきた。上野千鶴子さんがコメントを寄せた通り「安積遊歩さんは生ける障害者自立運動史」といえる。
彼女たちの闘いがあったからこそ、公共交通機関の駅にエレベーターやスロープが取り付けられ、バスにスロープが付き、「不良な子孫の出生を防止する」と謳われていた優生保護法が廃止され、重い障害を持つ人たちが(主として都会では)24時間介助を受けながら地域で一人で暮らすことができるようになった。そして遊歩さんは、筋金入りのフェミニストでビーガンでもある。その生き様は、知れば知るほど潔くってカッコいい。
遊歩さんの著作は元気をくれる ©2026動画工房ぞうしま
しかし私は映画を見たことで、とてつもなく大きな宿題をもらった気にもなっている。
「どうすればよかったか?」への応答としては、「こうすればよかった(しょうがい者自身が外に出て発言し、自らを可視化させることで周囲や社会に問題を提起して、社会自体を変えていく)」と言えるかもしれない。しかし、周囲を巻き込まざるを得ないその<正論>は、とてつもないエネルギーと時間と多くの仲間を必要とする営みだ。どんな時でも・誰にでも簡単にできることではない。
小さなころから「人に迷惑をかけてはいけません」と教わる日本社会で、ケアされなくては生きることができない人たち。私は仕事を通じて豊能障害者労働センター(大阪府箕面市、https://tumiki.com/)の活動を知ったことで「人に迷惑をかけてもいい」「(時には)迷惑をかけられてもいい」と思えるようにはなった。それはお互い様なのだから。迷惑をかけられて困るのなら、そのように伝えて話し合って解決法を探ればいい。
人は生まれた時にはケアなくては生きられない。そして年老いてからもケアなくしては生きられなくなる。
しかし、と私は考える。リブの洗礼を受けて「(今現在の)まるごとの私」を肯定できるようにはなったのだけれど「主体性を持つ自立した個人」であろうと一生懸命に生きてきて、親として子をケアし、老親の介護にも少し関わってきた者として、自らが「ケアされる側」になった時に、変化した自分自身を受け入れて、卑下することなく主体性を保つことができるのだろうか…。そんな迷いを抱える私には、自身の体と歩みをまるごと受け入れて、軽やかに生きている(ように思える)遊歩さんの姿はまぶしい。まぶしすぎる!
私自身の変化はまだもう少し先のこととは思いながら、認知症となり、私の名前すら忘れてしまった母の顔を思い浮かべると「ただ生きている」ことの尊さも思いつつも、大変な宿題を背負い込んでしまったという思いは深い。誰もが行く道なのだけれど……。(大田季子)
[東京]ポレポレ東中野、[大阪]第七藝術劇場にて公開中、ほか全国順次公開
「遊歩 ノーボーダー」公式ホームページはコチラ https://yuho-noborder.com/









