
「『新版 女の本屋の物語』復刊」の告知を見た瞬間、驚き、胸がつまり、涙がこみあげてきた。少し落ちついてきたところで、なんて素敵な表紙カバーなのだろうと思った。ひと目で宝物が詰まった本だということがわかる。
色鮮やかな黄色の台に乗っている「女の本屋の物語」の書体も、ひと昔前の本の書体っぽくて、「ちょっとむかし、こんなことがありました・・・」そんな内容が想像できる。
平安時代から今に至るまで語り継がれる「竹取物語」のような、これからもずっとずっと語り継がれる、語り継いでいきたい、女の本屋を取りまく女性たちの「物語」・・・

昨年2025年6月、京都にあるシスターフッド書店Kaninさんを訪ねた。単に本を販売する「店」ではなく、女性たちが集い、語り合う「スペース」。そこの本棚にあった『女の本屋の物語』に目がとまり、手に取った。お店に一冊だけ残っていた旧版で、売り物ではなかった。
それを見た店主さんから、「この本を復刊したいのだけど、どうしたらいいでしょうか。誰とコンタクトをとったらいいのでしょうか」と話しかけられた。お店を訪れるお客さんからこの本の問い合わせや注文依頼が度々あり、店主としてもなんとか復刊してお店に置きたいとのこと。
Kaninは、店主のお二人が『女の本屋の物語』に影響を受け、それもきっかけとなってオープンした書店だということ。Kaninのことを知った中西豊子さんもお店を訪ねてくれ、その後中西さんから『資料 日本ウーマンリブ史』をはじめとする数々の貴重な蔵書を譲り受けたことをうかがった。「女の本屋」の蔵書とともに理念の跡継ぎとしても、この本を、この物語を、より多くの人に伝えたい、そんな使命感ともいえる想いが伝わってきた。
出版業界につてのないわたしは、同著に度々登場し、解説も書き、中西さんと親交の深い上野千鶴子さんに相談した。
相談メールを送ってから一時間も経たないうちに、「著作権者は中西さんご本人。出版社はドメス出版。契約期間は過ぎていますから文庫にする手はあります。版元に相談してみます。」という返信があった。
その返信からちょうど一年の歳月が経った2026年6月、WANサイト上で『新版 女の本屋の物語』の文字を目にした。
「えっ?」と記事を開いた瞬間・・・冒頭で書いたとおりである。
上野さんによる「新版に寄せて」の最後にこう書かれている。
「本書の復刊は、わたしたちよりうんと若い世代の女のひとたちの声によって実現した。この本があることを知り、それが絶版になっていることを残念に思った若いひとたちが、復刊してほしい、と声をあげた。その声が出版社に届いた。出版不況のなかで、本を出すことも、売ることも、ハードルが高くなった。でも、本が好きなひと、本を必要とする人たちは必ずいる。本書がそのひとたちに届きますように。」
声が届き、本が届いた。
「本、届きました。」
つぶやきながら、また胸がいっぱいになり、涙があふれた。
そうつぶやいたのはわたしだけではなかった。
まわりからも次々と「本を予約しました!」「購入しました!」という声を聴いた。
(ついでに)こんな声も聴いた。
「先ほどkindle版を購入予約しました~(紙の本にして、いつの日かサインをもらうべきだったか?)」(Mさん)、
「紙の本、購入しました!サインくれるかなー」(Yさん)
(原文ママ。本人に無断で引用)
多くのうんと若い世代の女のひとたちが、復刊を心待ちにしていた。
本に描かれているのは、店主の中西さんを中心に、過去に集い、話し合い、共に助け合った女性たちである。それなのに、まるで今、隣で一緒に行動を起こしているような、そんな気持ちになる。時代が変わっても根本にあるもの、わたしたちが対峙しているものは変わらないからなのか?それぞれの時代の女性たちの生きざまを記録として残すことの大切さを『女の本屋の物語』が教えてくれる。
KaninさんのInstagramにこう書かれている。
******************************************************
6月12日発売『女の本屋の物語』が、Kaninにも入荷しました!
1980年代の京都で日本初のフェミニスト書店を立ち上げた中西豊子さんの名著。
Kaninの店主ふたりが大いに影響を受け、書店をオープンするきっかけともなった本です。
旧版が在庫切れとなった昨年春、このまま絶版になってしまうのを残念に思い、WANとつながりのあるお客様を通じて店主ⓒが上野千鶴子さんにお声がけしたことが、このたびの復刊につながったそうです。
たくさんの人の熱意によって作られたこの本に、少しだけでもKaninも関われたことが光栄です!
******************************************************
なんとか伝えたい、つなぎたい、そんな想いと熱意があふれる本。
後日、復刊にかかわった方々の、復刊に至るまでのこの一年間の様々な苦労を知った。
出版社が見つかるまでの苦労、出版が認められるまでの苦労、そして出版されるまでの苦労。
女の本屋があげた声を真摯に受けとめ、高いハードルを越えるために奔走した方たち。
それらの人々が織りなす『女の本屋の物語』復刊の小さな物語。
大切な宝物は引き継がれ、
そして、物語は続く。
この場をお借りして、復刊にご尽力くださったWANの上野千鶴子さん、晶文社の吉川浩満さん、幻冬舎の竹村優子さん、そして著者の中西豊子さんに心より感謝申し上げます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
シスターフッド書店KaninさんのInstagram: @kaninbooks
関連記事
中西豊子・著『新版 女の本屋の物語』 ◆吉川浩満(晶文社)/竹村優子(幻冬舎)
https://wan.or.jp/article/show/12497
【転載】中西豊子・著『新版 女の本屋の物語』 ◆梅津奏
https://wan.or.jp/article/show/12521









