当事者研究とフェミニズム

本書は、私・横道誠と、YouTubeチャンネル『未来に残したい授業』を運営するだいまりこさんによる対話の記録です。東京・中延の「隣町珈琲」で開催した連続トークイベント「当事者研究のワンダーランド」全7回をもとに、発達障害とニューロダイバーシティ、宗教2世、ジェンダーとセクシュアリティ、海外生活経験者、情報発信などの主題を扱い、附録として希死念慮をめぐる対話を収めました。

当事者研究とは、北海道の「浦河べてるの家」で生まれた実践です。自分の抱える「苦労」を専門家の手から当事者たる自分の手に取りもどし、仲間とともにその仕組みを研究する。スローガンは「自分自身で、ともに」。忘れてならないのは、フェミニズムにはこの当事者研究の先駆形態という面もあることです。女性たちが個人の内面の問題とされてきたものを語りあい、社会構造の問題として捉えなおしてきたコンシャスネス・レイジングの営みは、当事者研究が受けついだ水脈にほかなりません。

WANの読者のみなさんに、まず開いてほしいのは第3章「ジェンダーとセクシュアリティ」です。だいさんはここで、「女性性を利用して生きてきた」という後ろめたさから、自分がフェミニストだと公言するまでの長い葛藤を語ります。専業主婦だった8年間への引け目や母娘関係の息苦しさを「私が選んだ過ち」と責めてきたけれど、フェミニズムを学ぶなかで社会構造の問題として捉えなおせるようになった──その道のりが率直に開示され、フェミニズムの先駆者たちの名前も言及されます。

評者の私自身は性的少数者として、発達障害者として、あるいは宗教2世として、女性たちの困難と地続きのトラウマに満ちた人生を歩んできました。あなたの苦労を研究するための一冊として、手にとっていただけたらうれしいです。

◆書誌データ
書名 :『自分の弱さを研究してみた。──当事者研究という新しい冒険』
著者 :横道誠/だいまりこ
頁数 :248頁
刊行日:2026/7/13
出版社:教育評論社
定価 :2,200円(税込)