依存と依存症のはざまで苦しみ過ぎずに生きていくには
BR 「依存」は治療すべき「病」なのか、それとも人が傷つきから生き延びるための営み(コーピング)なのか――本書は「やめられない」ことに悩む若者たちに向けて、依存をめぐる問いに真正面から向き合い「対話」する、当事者と専門家による共同企画です。

本書では、著者それぞれが若い頃や、今よりもっと苦しんでいた頃の心の内を語り合っています。誰も理解してくれない、人を信じられないし頼れない、自分が悪いのではないかと感じる、どこにも居場所がない。著者陣は全員がそう感じ、強く何かに「依存」してきました。

私自身は、依存してきたあれこれによって生き延びてきたという実感を本書での対話で得たと同時に、やらないほうがよいことはやらなければよかったと悔やむ思いが、今でも半分半分で自分の中に横たわっています。

そのように後悔が残ることを、どうやったらやらずに済んだだろう? それでもやってしまった時には、どのように捉えたらよいだろう? そんな問いが、私の本書への参加動機でした。

アルコール依存症の父を持ち、母を自死で亡くしている漫画家の菊池真理子さんは、本書でそれらの境遇に加えて、性被害体験やその後の性行動についても語っています。そんな菊池さんが語る「真面目な本とかに「あなたは一人じゃない」って書いてあっても「は? 助けてもくれないくせに、何言ってるの?」って思ってたんですよ。でも結局救われたのは、「一人じゃない」って事実でした」という言葉。

宗教二世、発達障害、アルコール依存症当事者である文学研究者の横道誠さんが語る「僕がアルコールをやめられるようになったのも、「意志の力」ではなく、環境が変わったからです。自助グループに出会って、同じような経験を持つ人たちとつながって、「自分だけじゃなかったんだ」と思えた。それが大きかった。当事者同士の語り合いは、依存症者の環境と社会をガラッと変えます。人を取り巻く環境と社会というのは、人間関係そのものだからです」という言葉には、依存はしても今日まで生き延びてきた秘訣が詰まっているように感じました。

「一人じゃない」「自分だけじゃなかったんだ」と思うことは、一人ではできません。若い時には資源がより限られているため、周りにそのように感じられる人がいなければ、とても孤独でつらい闘いを強いられるでしょうし、私自身がそうでした。

「あなたは悪くない」と言ってくれる人がそばにいてくれたら、どんなによかったか……と思うと、今でも涙が出てきます。あの時に言って欲しかったこと、感じたかったことに数十年経った今出会えた、どうかこれが今苦しんでいる人に届きますように、との思いで制作しましたし、その願いは著者一同に共通していると思います。

「つらさとどう向き合うか」「自分を傷つけ過ぎない「やめられない」にどうシフトしていくか」「人を傷つけてしまうこと」「家が嫌だったらどうする」「危険な居場所と安全な居場所は見分け可能か」「人とつながる前に」「秘密を持つこと」など、それぞれの著者がキレイゴト抜きで赤裸々に経験やアイディアを語り合っています。

当事者が集い、言葉にしていくことが持つ意味や力を私に教えてくれたのは他でもないフェミニズムですが、本書にもその精神が詰まっているのではないかと思います。

◆書誌データ
書名 :『「やめられない」をどうするか: きみと同じことで悩んでる大人たちの生存戦略』
著者 :松本俊彦/横道誠/菊池真理子/二村ヒトシ/だいまりこ/加藤浩平
頁数 :195頁
刊行日:2026/07/14
出版社:金子書房
定価 :2,200円(税込)