2014.05.11 Sun
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.初読刑事:事件ですね。
再読刑事:事件だな。
初:学校教員仁木順平は、夏休みに家を出て失踪。
再:海辺で趣味の昆虫採集に熱中し終バスを逃がし、地元の老人に勧められるまま砂丘の部落に一泊したのが災いの始まりだった。
初:部落の家々は穴底にあり、縄梯子を外され出られなくなった―『砂の女』巻末の「仁木順平失踪届け」によれば、仁木は昭和2年生とあるから…
再:いま生存していたとして、八十六歳か。
初:妻は穴底の家にいた〈三十そこそこの寡婦〉でしょうか。
再:岸田今日子だ。亡くなっている。
初:先輩。それは映画です。
再:すまん。映画のイメージが抜けなくてな。
初:先輩は、映画みた後で初読したんですか?
再:かなり昔ね。ずいぶん忘れてて初読のような再読だったぞ。
初:…。ちなみに男優は?
再:当時四十四歳の俳優、岡田英次だ。
初:仁木は二十八歳です。キャスティングに無理がありますね。
再:いや、そうでもない。「失踪届け」の換算では二十八歳だが、第二章だと〈仁木順平、三十一歳〉とも書いてある。
初:安部公房もアバウトですね。
再:いや。テクストに準拠するとだな、ここには仁木順平以外にも、セールスマンや学生、複数の男が穴底に監禁され続けている様子なのだ。
初:なるほど。部落には幾人もの〝仁木順平〟がいただろうと。
c
初:工業標準化法違反です。
再:事件の背後に、土建屋だ。そして複数の〝仁木〟が拘束されていたとすれば、それぞれに複数の寡婦があてがわれていたはずだ。強制売春組織のようなものも考える必要がある。
初:‥。そういえば先輩。小説冒頭では〈漁業組合の集合所らし〉いものが描写されているが、後半では〈農協の出張所〉に見張られています。これは一体どういう組織でしょう。
再:漁協にカムフラージュした農協だな。しかし、いったい何処の‥。
初:先輩、村の生産物は落花生です。いまグーグルで調べたところ、落花生の全国収穫量の72%が千葉県です!
再:72%の確率で、千葉だな。
初:しかし先輩。JA全農ちばのホームページに、そんな陰惨な雰囲気は。
再:アタリマエだ! 仁木順平は穴底での監禁生活にもかかわらず、家で使える溜水装置など発明しているのだ。村は〝仁木順平〟ら外部の人材を投入することで、結果的には復興に成功した。
初:千葉県。たしかに、仁木が求めた昆虫・ハンミョウも、部落が生産を予定しているチューリップ畑も、千葉にありますが…。
再:蟻地獄ムラは〈S駅〉だ。さ行の駅、どっかないか?
初:「さ」…佐倉駅、「し」…下総‥、内陸すぎる。もっと海辺のはずです。
再:山武郡九十九里は?
初:そんな駅ありません! しかし先輩、『砂の女』は、〈農協〉とか〈漁協〉とか、こうした記載による名誉毀損は心配ないのでしょうか。
再:新潮文庫ドナルド・キーンの解説には〈安部氏の創造力によるフィクションである〉とひとことあるがな。
初:作者からの実在の団体と関係ありません等の断わり書きがないぶん、解説で気を使ったとか?
再:砂をかむような事件だな。
初:しかし先輩、コッチの事件は、動きませんね~。
再:張り込みがヒマなうち、もう一冊読むか?
杵渕里果
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