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映画評:『オーシャンズ』    濱野千尋

2010.03.23 Tue

あらすじ
 100種類の海洋動物の姿を伝えるドキュメンタリー。4年がかり、世界50か所で撮影した。魚雷型カメラを2年かけて開発したり、海の底に撮影用のレールを引いたりと、とてつもない気合いを入れて採取した映像が圧巻。 カメラ目線のカサゴがあんなに愛らしいものとは知らなかった。だいたいカサゴの顔を正面からまじまじ見つめる機会など、あまりない。この映画を見て思うのは、「こりゃ水族館に行ってる場合じゃない」ということ。水槽を眺める数百倍、海を体感できると約束しよう。

 イルカやクジラなどのスター級の動物だけではなく、地味な生物にもちゃんと存在感を与えているのもいい。海の底でひたすらユラユラして過ごしているらしい、私には名前も分からなければ存在意義も想像できそうにない生き物の群れが映されたとき、軽くめまいがした。私ったら焦ってばかりの大ばかやろうだわ、ユラユラしてればいいんじゃないか、この不思議生物みたいに。

 などと思いながら見ていると、波音に紛れていびきが聞こえてきた。リラックス効果抜群の映画なので、寝ちゃう人続出でもおかしくない。ちなみに、ばっちり快眠できるはずだ。

(初出『新潮45』2010年2月号)

タグ:映画 / 濱野千尋