2011.08.18 Thu
■ごあいさつ■
弁護士の打越さく良(プロフィール:wanの法律相談室 http://wan.or.jp/help/law/ 参照)が、離婚をめぐる法的なあれこれについて、Qに答える形でわかりやすく解説していく「離婚ガイド」の連載を始めます。毎月1回更新の予定です。
ご希望ご意見を寄せていただければこれからの原稿に反映して行きたいと思います。よろしくお願いいたします。
まず第1回目のお題は、「離婚にはどんな方法がありますか」
……
【打越さく良の離婚ガイド】NO.1-1 離婚の方法
1 離婚の方法(協議・調停・裁判)
日本では,離婚の方法は,協議離婚(民法763条),調停離婚(家事審判法21条),審判離婚(家事審判法24条),和解離婚(人事訴訟法37条),裁判離婚(民法770条)があります。
◎協議離婚
離婚の中で圧倒的多数は,協議離婚です。当事者が離婚に合意し離婚届に署名押印して提出すれば,協議離婚となります。前もって20歳以上の2人に証人として離婚届に署名押印してもらう必要があります。裁判所のチェックが全く入らない協議離婚は,簡便として広く利用されていますが,協議離婚後,養育費,慰謝料,財産分与,面会交流等の条件を協議しようとしても,相手が話し合いに応じてくれず,結局調停や裁判,審判を利用しなければならず,かえって時間も費用もかかってしまう場合もあります。慌てず,よく話し合って条件について合意した上で協議離婚することをお勧めします。
養育費等お金のことも合意した場合,公正証書を作成しましょう。公正証書には,強制執行認諾文言(「甲は,本和解条項に定める金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する旨陳述した。」という文言)を忘れないでください。この文言を付した公正証書により,判決や調停調書と同様,万が一相手が約束を守らない場合に,強制執行することが出来ます。
◎調停離婚
協議離婚が難しい場合には,家庭裁判所に調停を申立てます。申立ての手数料は,1200円と安価です。調停では,裁判官と男女2名の調停委員が,申立人と相手方双方の話を聞きながら,解決方法につき意向を確かめ,調整していきます。調停は,裁判所が関与していますが,当事者間の合意で離婚の条件を決めます。
調停を省き,一足飛びに訴訟をしたい!というご要望もよく承りますが,原則として,訴訟の前に,調停をする必要があります(調停前置主義)。実際,調停委員を介して条件面での調整がつき,案外早く解決できることもあります。
◎審判離婚
家庭裁判所は,調停不成立の場合に,職権で,離婚の審判をすることができます。ただし,審判の告知から2週間以内に当事者が異議を申し立てれば,審判は効力を失ってしまいます。そのためもあって,審判離婚はほとんど利用されていません。
◎判決離婚・和解離婚
調停不成立となった場合,離婚の決着をつけたいときは,訴訟を提起しなければなりません。裁判で離婚する場合,離婚原因(民法770条1項)を満たすことが必要です。①配偶者に不貞な行為があったとき,②配偶者から悪意で遺棄されたとき,③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき,④配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき,⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき,のどれか一つに当てはまらなければ,離婚は認められません。協議離婚や調停離婚では,離婚原因が明確でなくても,当事者間で合意が出来れば,離婚が出来ますが,裁判離婚の場合には,争点及び証拠の整理手続,さらに,証拠調べ(原告・被告本人尋問等)を経た後,裁判所により証拠に基づいて離婚原因があると判断された場合に,離婚を認容する判決が出ることになります。ないと判断された場合には,棄却の判決となります。
裁判の途中で離婚及び条件について合意できた場合,和解離婚が出来ます。和解調書も,判決や調停調書と同様に,強制執行が可能です。
■打越さく良:弁護士■
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
タグ:非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / 弁護士 / フェミニズム,家族,離婚, 打越さく良,エッセイ,離婚ガイド,親権
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