2012.04.20 Fri
マルタ・バレッタのホテル。出窓を開ければ目の前は青い海。「わあー、地中海をひとり占め」と、うれしくなる。強い日差しがかげると、対岸の聖アンジェロ砦に夕日が沈む。「グランド・ハーバーホテル」は☆二つ。明るい景色と安い料金。だけどトイレのドアの鍵が壊れていた。知らずに入って閉じ込められ、やっとの思いで脱出した。
パリ・カルチェラタン。パリ第3・第4大学の向かいに「ホテル・ソルボンヌ」がある。☆二つ。どこかで赤ん坊のなき声が聞こえる。空いていたのは屋根裏部屋。天井の傾斜が迫ってくる。でも広い。裏窓からソルボンヌ大学の中庭を見渡せる。ホテルの朝食はシンプルにクロワッサンとコーヒーのみ。
フロントに座るブラックの女性に「セーフティボックスはある?」。彼女はドンと厚い胸を叩いて、「私がセーフティボックスよ」とニッコリ笑った。
「ジョージ・ホテル」はロンドン・ブルームズベリー地区、ラッセルズ・スクエア駅近く。フロントでインド人男性に「宿をとれますか?」と聞く。女一人と思ったのか、いぶかしそうに首をかしげる。「みねさんの方が交渉がうまいから、予約してきてよ」と外で待っている連れの男に気づいたのか、もしかしたら私を年増のプロスティチュートと間違えたのかもしれないな。
ホテルを探せば町が見える。行きたいエリアを決めて、その近くのホテルを探す。条件は☆一つか二つ。ネットがない頃は地図だけが頼り。空港や駅からのアクセスを調べて、「このへんかな」と目星をつけておく。
インフォメーションやVVV(フェー・フェー・フェー)の紹介は、ちょっと高め。だから自分で見つける。下町の市場近くは、おいしいレストランが並んでいる。
陽が高いうちに宿をとるのがコツ。でも飛行機の到着が夜になると、宿にたどりつくまでが大変。空港から終電間際の地下鉄やバスに飛び乗り、地図を片手に暗い道を急ぐ。通りがかりの人をつかまえては聞く。むろん言葉はしゃべれない。でも、なんとかわかってくれるから不思議だ。「ああ、そのホテルなら、こっちだよ」とつれていってくれることもある。
原則、ホテルは予約せずに行く。知らない町で、知らないホテルにかけあう。「なんとかなるさ」と、旅は道草の気分。ときには思いがけないハプニングもある。
ヴェネチアに入った日はレガッタの日と重なり、どこも満杯。ミシュランに載っていたホテルAlaの支配人が、「工事中でもいいなら」と安く泊めてくれた。
ミラノも国際見本市のさなかだった。みんな断られて、仕方なくシャワーもない旧市街の安ホテルに。だけどその晩、ガリバルディ駅近くのトラットリアで、北イタリア風、絶品のリゾットにありつけたのだ。
バルセロナのホテルはロビーにガウディの造形を模した、その名も「ガウディ」。
イスタンブールの安宿は、「オリエント急行」の終着駅・スィルケジ駅のすぐ裏。パリからの運行は年に一度の「オリエント・エクスプレス」に偶然、遭遇したのも幸運だった。
いつもいつも、カンファタブルな旅に恵まれるのは、ほんとにありがたいなと思う。
でも、一回くらいは一流ホテルに泊まってみたい。ポルトガルのポルトからドウロ川上流のポルトワインの町・ピニャオン。ワイン倉庫を改造したコテージ風の高級ホテル「ビンデージ」。玄関には夏の花が今を盛りと咲き乱れていた。いつかきっと再訪して、このホテルに泊まってみたいなと思った。
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