2013.05.30 Thu
恋愛をたのしむ女たち「ホン・サンス監督特集プラスワン」
カンヌ、ヴェネチア、ベルリン――世界の3大映画祭を賑わし、ヨーロッパで絶大なる人気を誇るホン・サンス。恋する男女の姿を軽妙に、そしてウィットに富む粋な会話を通して描く、その類を見ないスタイルで「韓国のゴダール」「ロメールの弟子」などとも評されている。新作『3人のアンヌ』(イザベル・ユペール主演)の公開を記念して、ホン・サンス監督の過去作を一挙に上映する企画「ホン・サンス監督特集プラスワン」が6月1日より1週間オーディトリウム渋谷にて行われる。目玉は、既に国内での上映権が切れている『浜辺の女』の35ミリフィルム特別上映。ホン・サンスが敬愛し「僕の作品の原点になった映画」と公言しているエリック・ロメール『緑の光線』をも交え、ホン・サンスの原点から現在までを追跡できる企画だ。
写真(右)『よく知りもしないくせに』
ホン・サンスは、男女の何気ない恋愛のやりとりやひとコマを一貫して描きつづけている。何気ないにも関わらず、観ていて飽きないのが不思議だ。だいたいいつも主人公は映画監督。そこまで有名ではないが、そこそこ知名度はある。そして、女好き。酔ってはすぐに女を口説きはじめるしょうもない男たち。ホン・サンスの近作で特筆すべきなのは、ホン・サンスの描く女性像。韓国における女性の社会的な地位の変化の現れもあるのか、映画に登場する女たちは、みな恋愛を自分本位でたのしんでいる。決定権を持つのはいつも女なのかもしれないと、その生き生きと映し出される姿をみながら感じさせられる。
もうすぐ公開になる新作『3人のアンヌ』では、フランスの名女優イザベル・ユペールを主演に迎え、話題に。フランスから韓国の海辺にヴァカンスでやってきたそれぞれキャラクターの違う“3人の”アンヌたちが、可笑しなほどに情熱的なライフガードと出会いささやかな恋をする。その片言での恋模様はユーモアたっぷり。恋愛映画の名手は、国境をも越えてその腕に磨きをかけていると評判だ。
過去の恋や、一目ぼれ、三角関係など、さまざまな構図でホン・サンスが描く現代的な男女の恋愛劇。ぜひこの機会にスクリーンで観てほしい。
写真(上)『浜辺の女』(C)MIROVISION Inc.
写真(右下)『女は男の未来だ』
6/1(土)~6/7(金)オーディトリウム渋谷にて上映
http://a-shibuya.jp/archives/6274
<上映作品>
『女は男の未来だ』(2004)
『浜辺の女』(2006/特別上映)
『アバンチュールはパリで』(2008)
『よく知りもしないくせに』(2009)
『ハハハ』(2010)
『教授とわたし、そして映画』(2010)
『次の朝は他人』(2011)
特別招待:エリック・ロメール『緑の光線』(1986)
☆6/2(日)16:40の『次の朝は他人』上映後スペシャルトークショー
ゲスト:菊地成孔(音楽家・文筆家) x 韓東賢(ハン・トンヒョン/日本映画大学 准教授)
■3人のアンヌ
6/15(土)シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
http://bitters.co.jp/3anne/
カテゴリー:新作映画評・エッセイ