2013.10.23 Wed
☆このコーナーでは、登場人物の女性像に焦点を合わせて新作映画をご紹介します。
この映画は、何かから必死に逃れようと走る若い女性の姿から始まります。そこには明らかに犯罪の匂いが感じられます。誰が誰に対して何をしたのかは、しかし、はっきりとは示されません。のっけからぐーっと観客を引きつける展開です。そして女性は変装して辛くも追っ手から逃れ、長距離バスに乗り込みますが、バスが休憩場所であるノースカロライナ州の美しい小さな港町サウスポートに停車したとき、彼女はこの地にしばらく留まることを決めます。
タイトルのSafe Havenは「安全な避難所」という意味で、最初から、この平和な港町が、いわくありげなこの女性の“隠れ家”として選ばれたことがわかります。
この作品は、ミステリー仕立てのラブストーリー(あるいはその逆?)と言える内容で、とにかく脚本とプロットが非常によくできています。あっと驚く意外な展開や結末が用意されているため、ストーリーについてはネタばれになるので詳しくは語れませんが、私がここで注目したいのは、主人公であるこの女性、ケイティのキャラクターです。
彼女はこの港町で、妻と死別して幼い2人の子供と暮らす、気のいい雑貨店主の男性アレックスと出会います。二人は互いにぎこちない関係から始まりつつも徐々に惹かれ合っていくのですが、私は、アレックスがケイティに惹かれていく気持ちがすごくよくわかりました。彼女は(もっともな理由があるのですが)、自分や自分の過去について決して多くを語りません。なぜこの地にやって来たかも謎のままです。アレックスは、そういう、ちょっと暗い影があり、他人を寄せ付けないかのような態度を取っていたケイティになんとか近づこう、助けになろう、と一生懸命になります。もちろん彼女はすごい美人でもあるのですが、普通に考えれば、犯罪に絡んでいる可能性もある“ちょっと危なそうな女”でもあるわけです。それにもかかわらず、“得体の知れない謎めいた女”というキャラクターは、きっと、多くの男性を虜にする魅力があるのでしょう。
一方、女が“暗い影のある謎めいた男”に惹かれるかどうかというのは、女性の好み次第かな、という気がします。私自身は、ちょっとしたミステリアスな雰囲気くらいならいいけれど、少しでも危なそうな男はごめん被りたいタイプですが……。
それはともかく、後に明らかになるケイティの“事情”は、非常にシリアスな問題を含んでいるのですが、ケイティが期せずして演じることになった“ミステリアスな女”はいつの時代にも最強のモテキャラなんだな〜、ということを感じた映画でした。嘘だと思う方は、初対面の男性相手に試してみてはいかがでしょうか。
ちなみに、この映画には、ケイティの上を行く、もう一人のもっと“ミステリアスな女”も登場しますが、それは映画を観てのお楽しみに。
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Story
どしゃ降りの雨の夜、何かに怯えながら、ボストンからアトランタ行き長距離バスに乗り込んだ若い女性。バスの休憩地である小さな港町の素朴で美しい風景に心を引かれた彼女は、その地にとどまることにする。ケイティ・フェルドマンと名乗り、森の中のキャビンを借りてひっそりと住み始めた彼女は、町の人々とは距離を置いていたが、愛妻をガンで亡くし子供2人を育てる雑貨店主アレックスは、ある出来事をきっかけに急速にケイティに惹かれていき、やがて二人はデートを重ねるようになるーー。人気作家ニコラス・スパークスの脚本を名匠ラッセ・ハルストレムが映画化したラブ・ミステリー。
『セイフ ヘイヴン』/SAFE HAVEN
アレックス:ジョシュ・デュアメル
ケイティ:ジュリアン・ハフ
ジョー:コビー・スマルダーズ
ケヴィン:デヴィッド・ライオンズ
監督:ラッセ・ハルストレム
配給:ポニーキャニオン
2013年/アメリカ/カラー/英語/116分
2013年10月26日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他全国公開
公式HPはこちら
© 2013 Safe Haven Productions, LCC All Rights Reserved.
カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 特集・シリーズ / 映画の中の女たち
タグ:DV・性暴力・ハラスメント / セクシュアリティ / 映画 / DV / アメリカ映画 / 映画の中の女たち / 仁生碧 / 女と映画
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