2014.05.30 Fri
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ひとりの午後に
著者 上野千鶴子
NHK出版
2010年4月 出版
「けんかの達人と呼ばれた社会学者が、その知られざる内面としなやかな暮らしを綴ったおとなのためのエッセイ集」と書籍の帯に書かれていた。「考えたことは売りますが、感じたことは売りません」と上野さん曰く、この本は研究者としては禁を犯して感じたことを語りすぎた一冊だそうだ。正直に言うと私は、このブックナビの機会を得るまで、上野千鶴子さんという人物も著書も知らなかった。上野さんの本はむずかしく、身をよじりながらも読んできた。それは偏に上野さんの「知られざる内面」に惹きこまれたからだった。
老いに向かうくだり坂、タイトルにある「午後」は、人生のくだり坂を指す。「ひとりの午後」には、ながく重ねてきた過去ではなくその人の「いま」がある。その人の経てきた時間、経験がいまのこのひとを創ってきた。
暫し社会を、ひとりの人生におき替えて、しなやかな感性に筆をあずける。現実をリアルに見てきた上野さんがいる午後の景色は、どんなだろうか。日射しの翳りのなかでこそ、見えてくるもの―。おひとりおひとりの「いま」になにかを届けてくれるだろう。
堀 紀美子
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