動物・人間・暴虐史: “飼い貶し”の大罪、世界紛争と資本主義

著者:デビッド・A. ナイバート

新評論( 2016-07-29 )


ハンバーガーやオムライス、ミルクココアを飲食する人は、自分が暴力の加担者となっていることを意識してはいないだろう。しかしこうした動物性食品は、大量の動物を犠牲にするだけでなく、その動物を維持する飼料生産のため、土地収奪や資源略奪をも引き起こす。それに牧場をつくるための森林伐採、伐採に伴う地球温暖化の進行など、あまたの環境破壊も。しわ寄せが行くのは貧困地帯、その中でも社会的に不利な女性や子供は最大の被害者となる。動物搾取を前提する私たちの消費活動は、必然的に人間搾取と結び付く。

本書はこの、動物に対する抑圧と人間に対する抑圧の絡み合いを追う歴史書である。世界の歴史に共通するのは、動物利用が人間同士の大規模な暴力を叶え、かつ促してきたという関係性で、これは上述した現代世界の構図にまで引き継がれる。史的認識から生活を見直すための一冊として、本書が多くの方に読まれることを期待したい。(訳者 井上太一)