
2016年12月3日、韓国の国会に朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追案が提出された。12月9日韓国国会は票決により朴大統領の弾劾を決する。一部の与党議員が弾劾に同意していないので弾劾できるかは分からない。だが、多くの市民たち、女性たちががんばっているので、これから韓国ではより良い民主主義ができて、また女性の権利をめぐる状況も改善できると期待している。
弾劾訴追案が提出された日、ソウルの光化門広場で6回目のろうそくデモをするため集った市民は170万人、地方で開いていたろうそくデモまで合わせると合計232万人が集った。韓国現代史上、最大規模のデモだ。大規模のろうそくデモは2016年10月29日から毎週土曜日開いているが、寒い冬になっても参加者は増え続けている。多くの女性もデモに参加し、朴政権の退陣を要求している。

現在、朴大統領は、最高権力者として、腐敗スキャンダルに深く関与していると疑われている。朴大統領の側近―親友の崔順実氏、大統領府の秘書たちなど―と財界(財閥)との不法なコネ、崔順実氏の不正蓄財などが見つかり、多くの市民たちはもう大統領を逮捕して徹底に捜査すべきだと主張している。
崔順実氏の腐敗スキャンダルが韓国社会で広く知られたのは女子大学生たちのおかげだ。今年7月、韓国の梨花女子大学の学生たちは、学校側の財務不正に対して抗議して大学で座り込みデモをしたことがある。梨花女子大学生たちは座り込みの抗議をしながら、学校側の財務不正について調査してくれと、国会になんと2千件余りも陳情した。女性たちのこのような努力によって、9月の国政調査で大学側の財務不正が発覚されるようになったが、この時、学校側が崔順実氏の娘を不正入学させたり優遇したりしたことも発覚された。正義のため闘った女子大学生の行動が大規模のろうそくデモの火種をつくった。
もちろん、ここまで大規模なデモが起きているのは、韓国人が朴政権が行なってきた政治にとても怒っているからだ。朴大統領は自分の出身(父が朴正煕元大統領)、性別(生物学的な性別が女性)から自分が「準備のできている女性大統領」というスローガンを掲げてきたが、実際、行なってきた政治は、自分の父、軍部独裁者がやったことと同様な、腐敗していて、人の命を軽く思う政治、反人権的かつ反女性的な政治であった。
特に、韓国市民たちが朴政権に対して怒っているのは、2014年4月16日起きた大型旅客船「セウォル号」の沈没事故の後、ひたすら無責任な態度、真相究明に対して無関心な態度を見せてきたからだ。朴大統領はなぜ沈没事故の時、救助活動をまともにしなかったのか、なぜ自分が最高責任者である災難安全対策本部に、事故後7時間も姿を現していないのか。沈没事故では修学旅行に行く途中だった高校生を含め304人が命を失ったが、正確な事故原因も、救助しなかった理由も不明のままだ。
腐敗スキャンダルに対して批判が激しくなり、セウォル号事故の直後の7時間の間、大統領がどこで何をしていたのか明かせという要求が高まると、朴大統領の弁護士は「大統領も女性としてプライバシーがあるので気遣ってほしい」と公言した。これに対し、多くの女性は「朴大統領の女性としてプライバシーには何の関心もない、朴大統領が女性だからではなくて、大統領だから、公人だから、7時間もどこで何をしていたのかが知りたいのだ」と激しく反発した。朴大統領は何度も自分が「韓国初めての女性大統領だ」と強調してきたが、今まで朴大統領が行なってきた政治は、決して韓国の女性が願っていた政治でも、また女性のための政治でもなかった。
2016年5月ソウルの江南でミソジニーによる20代女性殺人事件が起きた後、朴政権が出した対策は、実にひどいものであった。犯人の男性は「女性が嫌いだ。今まで女性に無視されてきたので面識のない女性を殺した」と主張したが、警察は「精神障害者が犯した犯罪」としながら、精神障害者をすべて調査して、問題がある精神障害者は強制入院させるという障害者差別の対策を発表した。女性たちは、朴大統領が出してきたこのような反人権的な対策に対して、「韓国社会に広がっているミソジニーを直視しろ、障害者を差別するな」と、警察署の前で抗議のデモを開いていた。
9月には、保健福祉部(韓国の厚労省)から、突然、妊娠中絶手術を行う医者に対して、(現在)1ヶ月の資格停止の罰則から、12ヶ月の資格停止の期間を延長すると、医者に対する処罰強化案が出された。朴政権がこのような案を出した理由は、少子化を懸念する保守層の支持を念頭にしているからだ。家父長的な保守層の男性や女性は、朴大統領にとって最大の支持基盤だ。堕胎罪が刑法にすでに存在しているのに、また医者に対する処罰強化案まで出すということは、女性たちに子どもを産めと強制するのと同じだ。女性団体からは「医者に対する処罰強化案も、堕胎罪も、即刻廃止すべき」という共同声明書を出していた。

大規模のろうそくデモが始まった10月29日の午後、女性たちは黒い服を着てソウル市内で堕胎罪の廃止を要求する集会を開いた。黒い服を着たのは、女性が生殖権を持たないことに対する哀悼を意味しており、10月23日ポーランドの女性たちが、ポーランド政府から出された堕胎禁止法の廃止を求めるデモで、黒い服を着たのを真似たものだ。黒い服を着た韓国女性たちは、「女の子宮は女のもの」とピケッティングしながら、切実な思いから「国は出しゃばるな」、「朴槿恵は退陣しろ、堕胎罪を廃止しろ」とシュプレヒコールを叫んでいた。「私たちは子どもを産む機械ではない、男はコンドームを使わないが、妊娠すると逃げる、堕胎すると女に殺人鬼というのだ」という詩の歌も歌った。



10月29日以降、毎週ろうそくデモが開く時、女性たちは「朴槿恵は退陣しろ、堕胎罪を廃止しろ」と繰り返し叫んでいる。2回目の11月5日のデモに参加した一人の女性は、発言舞台で「私たちは女性大統領ではなく、フェミニストの大統領がほしい」といいながら「朴槿恵を、韓国最初の女性大統領というな。既得権層を代弁している権力にすぎない。女性が抱えた問題に対して一度真剣な対策を出していないのに、何が女性大統領だ」といった。多くの女性がこの主張を聞き、共感して拍手していた。


自称「女性大統領」の朴大統領は実に韓国女性を困らせてきたのだが、もうたくさんだ。韓国女性はもうがまんしない。変化はもう始まっている。
(キム・ディオン)
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