
例の医学部入試女性差別事件です。この差別は何とも許せない、腹立たしい事件でした。それが、今年の入試はどうだったかと、文科省が発表しました。その記事の見出しを見て、また怒りがわいてきました。
医学部入試9大学「改善」文科省(朝日新聞 2019年6月26日)
女子・浪人生の差別改善(毎日新聞 同上)
文科省が発表の中で「改善」ということばを使っているのです。なにが「改善」ですか。当たり前のことをしただけではないですか、と言いたいのです。
辞書には、「悪い状態を改めて、よい状態に<する/なる>こと」(『三省堂国語辞典』7版)と書かれています。
前よりよくなったから「改善」だと言っているのだと言われそうです。そうでしょうか。確かにひどい差別がなくなり、前よりはよくなったかもしれないけれど、そのことは特にいいことではなく、当たり前の本来の状態に戻っただけのことです。よくなったと言って喜んだり、ほめたりすることではないでしょう。差別というめちゃめちゃ悪いことをしていて、それをしなくなったというだけです。よくなったと言えるとしたら、今まで女性というだけで落としてきた受験生をみんな合格させて、不当な差別で苦しめた彼女たちの人生を取り戻し、全員がハッピーになった時でしょう。
文科省は「改善」などとほめていていいのですか、と言いたいのです。悪いことを散々していた人が、悪いことをしなくなっただけです。そんな人達をほめているから事態は変わらない、「改善」などと言うから、前科が帳消しになったように聞こえるではありませんか。ひどいことをした連中も、無罪放免になったと安心するではありませんか。
今までのひどい差別を、そうあっさりと忘れさせてはいけません。女性だから、浪人生だからという、ありえないひどい差別が何年も横行していた、それが文科省官僚の汚職がきっかけで、偶然明らかになった、東京医科大の入試女性差別が明るみに出たからあわてて、文科省は不正があるらしい大学に是正しろと言った、その結果、今年の入試では不正な差別はなくなったらしいということだけです。「改善」などと言っていたら、何年か経つとまた悪い連中は不正をやり始めるでしょう。徹底的に糾弾し続けないと、のど元過ぎれば熱さ忘れるになってしまいます。危ないです。
毎日新聞の「改善」の結果の表を写します。
女子を差別またはその疑いのある大学 2018年度入試女子の合格率 2019年度入試女子の合格率
東京医科大 3 (%) 20(%)
順天堂大 5 8
北里大 11 20
聖マリアンナ医科大 5 15
この大きな差はどうでしょう。東京医科大では、今年と去年とで17%の差があります。北里大では9%、聖マリアンナ大では10%です。この表から単純に言えるのは、去年この3大学を受験した女性の17%、9%、10%が、実力はあったのに女性だということで落とされた、それなのに、本人は自分の実力がなかったのだと自分を責め悔み嘆いて涙を流した、と言う理不尽さです。
そうした全く非人道的な理不尽さが、今まで何年、何十年にもわたって続けられていたのです。
累積にして何千人になるかわからないけれど、それほど多くの女子学生が自分の将来の夢を断たれてきた、その悔しさ無念さを思えば、1年だけの変化でそう簡単に帳消しにされてはたまったものではありません。今まで不合格にされた女性が訴訟を起こしています。当然です。理不尽に断たれた夢と歪められた人生を返せと叫ぶのは当然です。
一方でわたしは疑っています。これは氷山の一角に過ぎないのではないかと。今回は、偶然発覚した不正であり女性差別でした。外に出たから、マスメディアも世論も叩きましたが、まだまだ闇の中で行われている入試の女性差別があるのではないかと疑います。以前、公立高校で女子受験生の方が点数が高いので、何らかの操作がなされていると聞いたことがあります。適当な理由をつければ、それは可能でしょう。いま、全国の公立高校が、本当に公正で女性差別のない入試をしているかどうか本当に知りたいところです。
この前日の夕刊では、
国家公務員 合格倍率10倍切る 総合職女性は初の3割超え(朝日新聞 2019年6月25日夕刊)
とも伝えています。国家公務員総合職の合格者の中で女性が初めて3割を超えたのです。3割超えたことは喜ぶべきか、遅すぎたと怒るべきか、ちょっと微妙ですが、5割を超えたニュースを早く読みたいと思います。
要するに試験で、何も操作せずに単純に成績だけで決めれば、今でも女性は3割は合格できるということです。3割が定着し、職場で普通に働き普通に昇進するようになれば、4割になり5割になる道も開けます。
出発点で、女性だから合格点を高くするなんていう非道最悪の差別は、またそれに類するさまざまな女性差別は、即刻止めるべきです。
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