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本書は、ものごとを言葉にして意味づけすることを生業とする、ともに若き哲学者宮野真生子と文化人類学者磯野真穂による往復書簡。
宮野はがんに罹っていて「急に具合が悪くなる可能性がある」「そろそろホスピスを考えよ」と死がすぐそこかもしれない状況におかれている。2人は出会ってから1年も経っていない。にもかかわらず、死の直前まで言葉を紡ぎ続ける作業が続く。そして、死がそこまで迫ってきているのに、本書はまったくセンチメンタルではないところもいい。
「偶然」を20年研究してきた哲学者宮野に、いまのあなたの状況をとらえるのに自分自身の哲学をどう使うのか、と磯野が問うと、哲学者はがんになった不運に怒りながら、そこから自分の人生を取り戻そうともがいていると語り、自分は100%患者を受け入れてはいないのだと表明する。「私たちはそんなに唯々諾々と不運を受け入れて腑に落とす必要な
んかないのだ。そんなものは受け入れたくないともがけばいい」のだと。
死の受容過程を示したキューブラー・ロスも自らの死の際に、受容などできなかったという話を聞いたことがある。人はそう簡単に定説やマニュアル通りには動けない。