SNSで誰もが即座に異議申し立てをできるようになった現在、毎日のようにCMをはじめとした広告、プロモーションの「炎上」が目に入ります。たいていのCMには炎上するにたる理由があり、特にその多くがジェンダーへの無理解に端を欲していることはみなさんご存じの通りです。

本書は、東大で人気講義「ジェンダー論」を開く瀬地山教授が、実際の広告をもとに炎上の背景を読み解く教養書です。炎上は「4つのパターン」にわけることができ、それぞれの典型的な事例や反響とともに、作品が制作される際の思考回路などが分析されています。

とはいえ「失敗作」ばかりを取り上げているわけではなく、ジェンダーへの理解に満ちたユーモアたっぷりのCMもあったりします。どうしても残念な事例ばかり目立ちがちですが、まっとうな感覚を持った才能あるクリエイターも多数いることがうかがえます。

CMというポップな入り口から、出口は私たちの普遍的な権利や自由の問題へ。日々感じるモヤモヤや怒りを整理して言語化するためのきっかけになる一冊です。巻末付録の「広告の"炎上"史」は永久保存版です!