「PR誌ちくま」で長年続けている「世の中ラボ」の単行本化、第3弾です(第1弾「月夜にランタン」、第2弾「ニッポン沈没」)。毎月テーマを決め、3冊の本を選んで論じていくこの連載、2006年夏からなのでもう15年近くになります。今回は15年7月号~20年7月号のなかから選んだ42本を収録。

「バカが世の中を悪くする、とか言ってる場合じゃない」(政治、格差社会、安倍政権など)、「戦後日本の転換点はいつだったのか」(歴史や経済、右傾化について)、「わかったつもりになっちゃいけない、地方の現在地」(社会問題、生活、地方再生など)「文学はいつも現実の半歩先を行っている」(もちろん文学)、「当事者が声を挙げれば、やっぱり事態は変わるのだ」(フェミニズムやセクシュアリティについて)の5章建てで、最後にコロナ関連論考が2本。

安倍政権のレガシーは忖度社会。政権が交代してもそこは変わらないどころか強くなっている。日本の当事者として、ちゃんと情報を収集し、ちゃんと考え、ちゃんとものを言いましょう、という姿勢に貫かれた1冊です。そうそう、そうだったと改めて考えさせられること必至。
    (きいれ・ふゆこ 筑摩書房編集者・代表取締役)                                   

◆書誌データ
書名 :忖度しません
著者名:斎藤美奈子
頁数 :320頁
出版社:筑摩書房
刊行日:2020年9月12日
定価 :1760円(税込)