5月30日の数字です。今までに74万2049人の感染者と12931人の死者が出て、前日には全国で新たに3595人、東京で539人の感染者と91人の死者が出ています(毎日新聞5月30日)。緊急事態宣言は延長され、わたしたちは、「不要不急」の外出はやめろ、他府県には行くな、酒は飲むな、外食はするな、と日常のいろんな面で我慢させられています。いまごろ、例年ならきこえてくる子どもたちの運動会の声も今年は聞こえてきません。
その中で、聖火リレーはおかしなやり方で「消化」されているようです。
このリレー、大阪府知事を初めいくつかの自治体の首長は、感染を拡大するおそれがあるから、公道を走るリレーは中止すると言っています。すでに、公道は走らない、セレモニーだけ小規模の人数で行う、一般市民はご遠慮ください、という「聖火リレー」をすませたところもあります。これって「リレー」ですか。
もともと、聖火リレーは、『広辞苑7版』も記しているように、「競技式典で、聖火を掲げて行うリレー」です。間近に迫った世紀の祭典の前ぶれとして、聖火を順に渡してその喜びと期待を多くの人々と分かち合う儀式のはずです。どこかのホールで、こそこそと聖火を渡して、それで「リレー」と言えますか。今やその予定コースに当っている自治体にとっては、順番に当っているから仕方なしに消化するという、迷惑なお荷物になってしまっているのではないでしょうか。次の短歌は、朝日新聞(5月30日)の朝日歌壇に載ったものです。
見に行くな見ても喋るな拍手せよ 腫物のごと聖火来県 (大洲市)村上明美
まさに「腫物」です。そんな腫物を順番に渡してゆく意味は、もうありません。即刻「聖火リレー」はやめましょう。それに費やす自治体のエネルギーを地元のコロナ対策にあててください。
そして、本番の五輪です。今になって、五輪は開催するというIOCの会長や副会長、菅首相の声だけが(カラ?)元気に聞こえてきます。この人たちは、何が何でも開催するというだけで、わたしたちが納得できるような、開催に至るロードマップも示さないし、実際に開催するとして、その前後でコロナ感染によって起こりうる不測の事態について何も語りません。「もう、やるんだ」、「何が何でもやるんだ」という駄々っ子の発言です。
こんなことで突き進んでもらっては困ります。最近、この「無責任突進開催」を太平洋戦争開始のころや、失敗に終わったいくつかの作戦の指揮の取り方と比べて論じる人も出てきました。要するに成算もないままに開戦し、撤退の時期も読めなくて大きな人的物的被害を被った、いくつかの作戦に酷似しているというのです。そうです、精神論で「安心・安全」というだけでは、まさか開催すれば神風が吹いてコロナは吹き飛ばしてくれる、と思っているということはないでしょうが、もしかしてと疑うような無責任極まりない発言です。
菅さん、ほんとうに「安心・安全」ですか。こうしたコロナウイルスが蔓延している時期に五輪のような大きな規模のイベントを実施するのは、自殺行為だという人もいます。
わたしにもたくさん疑問や不安はありますが、とりあえず、以下のひとつだけのわたしの不安に答えてくださいませんか。
もし開いたとします。選手たちは、前回も書きました「泡」のなかにくるまれて過すものとして、感染を広げる危険は少ないかもしれません。(200か国からくる15000人以上の元気盛んな選手たちが、ほんとに「泡」の中におとなしくしているかどうかも疑わしいですが)
でも、選手以外に来日するという7万8000人もの五輪関係者・メディア関係の人々については、感染の危険はないのでしょうか。残念ながら、日本の水際対策はきわめて甘く緩やかなようです。最近の日本人帰国者の入国後2週間の隔離でも、100人以上の人たちが追跡できていないとニュースは伝えています。そんな甘い水際対策で、変異ウイルスも広がっている世界各地から来る7万8000人の人たちをコントロールできるのでしょうか。IOCの作った「プレーブック」によると、関係者の場合は、検査を毎日する、来日後3日間のホテル待機、その期間も条件を満たせば活動は可能、外出では選手のような専用の交通機関はなしです。
これで、来日する関係者にとっても、それを迎える地域の住民にとっても、感染のおそれはないのでしょうか。住民には外出を「自粛」させておきながら、こうした外国からの8万人近くの人たちが五輪会場近くを歩き回っても「安心・安全」ですか。
小池都知事にも尋ねたいです。東京には来ないでください、と知事はおっしゃっています。そう言いながら、海外からの選手や関係者は10万人近くも東京に来てもいいのですか。コロナの収束した地域もあるでしょうが、変異ウイルスが広がり始めた地域、一日に1万人もの死者が出ている地域、そんなさまざまな地域からの人たちを東京に迎えていいのですか。
それと、最近知ったことです。開催中は競技を多くの人に見せるため、代々木公園と井の頭公園に3万5千人のパブリック・ビューイングの会場を設けるのだそうです(NHK参院中継、5月28日15:00)。そんな多くの人を入れるためですから、公園の木も切らなければいけないとか。全く開いた口がふさがりません。三密を避けろ、外出するなと言っておいて、3万5千人をひとつの場所に集めるというのはめちゃくちゃじゃないですか。しかもそのために木も切ってしまうなんて。これも開催することから波及しておこる大被害です。
やはり、五輪は開催するべきではありません。即刻中止を決めるべきです。
2021.06.01 Tue
カテゴリー:連続エッセイ / やはり気になることば