頼もしく平らだった先生

                                  和光大学GF読書会会員 横澤清子

 歴史を学びたいと、24年前、50歳で大学院に入学しました。他方で女性学という分野も気になっていたので、和光大学に井上輝子先生がいらっしゃるとお聞きし、大学の授業の聴講生になったのが先生との出会いでした。大教室での授業でしたが、先生は授業の最後に必ず学生たちからの質問票に答えて下さっていました。男女の能力に差がないという説に対し、ちょっと意地悪な質問もありましたが、丁寧にかつ明快にお答えなさって、聞いていて溜飲が下がる思いだったことを覚えています。また最終講義のあと、外国人の先生が「ぼくは、何度も井上先生に議論を挑みましたが、一度も勝てたことがありませんでした。残念です。」となんだか嬉しそうで寂しそうにおっしゃっていたのが印象に残っています。
 井上先生は、学生に対しても同僚の先生に対しても、又ただただ学びたいと押しかけてくるものに対しても、常に平らで、穏やかに相手の不明な部分を正しほぐして下さいました。考えてみれば、今まで頂いてばかりで何もお返しできていなかったように思います。たぶん、このような時間がずーと続くと思って(願って)いたからでしょう。
 これから頑張りますというのには年を取りすぎたような気もしますが、亡くなる直前まで好奇心と何事にも挑戦する姿勢を忘れなかった先生の生き方を思い起こし、それを指針として、「学び」を続けていこうと思います。
 先生が退職後始められた和光大学での月3回のジェンダーフォーラム読書会も、今年で10年になります。若い方たちもどんどん増えて、先生、確かに芽は育ち広がりつつあります。私たち古株も新芽が育つ養分となれますようお力をお貸し下さいね。


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井上輝子さん追悼 WAN掲載記事 https://wan.or.jp/article/show/9659
みなさまからの追悼のお言葉は以下にも掲載されています。
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