出版フリーランスのユニオン・出版ネッツからのお知らせです。

*****(以下、5月29日追記)*****
5月25日、判決が出されました。
セクハラ・パワハラについては客観的な証拠がほとんどないなか、原告側の主張をほぼ認めた判決です。
また、被告会社(発注者会社)は、原告(フリーランス)に対し、原告が生命・身体等の安全を確保しつつ労務を提供することができるよう必要な配慮をすべき義務を負っていたとして、被告会社の安全配慮義務違反を認めました。
これは、フリーランスにとって、朗報です。


「声明」を出しましたので、ご覧ください。

【声明】
Aさん(業務委託契約報酬・ハラスメント慰謝料請求)事件
東京地方裁判所判決にあたっての声明
1 フリーライターの女性が、エステティックサロンを経営する会社に対して、業務委託契約の報酬と、セクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントによる慰謝料の支払を求めた事件の裁判において、2022(令和4)年5月25日、東京地方裁判所民事第25部(裁判長平城恭子、裁判官熊谷浩明、裁判官織田みのり)は、原告らに対して、一部認容判決を言い渡した。

2 判決は、業務委託契約報酬請求について、契約の成立を認め、原告の請求を全額認容した。
  そして、原告が請求している複数のセクシュアルハラスメント及びパワーハラスメント行為について、そのほとんどの事実を認定し、慰謝料150万円を認容した。
  ハラスメント事件が一般的にそうであるように、本件も、ハラスメント行為についての客観的証拠に乏しい事案である。それでも、判決は、「美容ライターとして安定した収入を得ることを嘱望する原告が、被告会社から業務の依頼を打ち切られ、報酬の支払を受けられなくなることを恐れて、被告代表者に対してセクハラ行為等による被害を訴えず、被告代表者との間でセクハラ行為等の存在をうかがわせる内容のメッセージのやり取りをしなかった可能性も十分あり得る」として、原告の供述の信用性を肯定し、原告の主張するほとんどの事実を認定した。
  また、本件契約は雇用契約でなく業務委託契約であるが、「原告が、当時、美容ライターとして固定額の月収を得られる仕事に就いたことがなく、被告代表者から、基本給を月15万円として業務委託契約を締結し、仕事の内容や結果をみて報酬を増額することや役員ないし正社員としての採用する可能性を示唆される一方で、結果が出なければすぐに契約を終了させる旨を告げられた上で、被告代表者の指示を仰ぎながら業務を履行しており、原告が被告代表者に従属し、被告代表者が原告に優越する関係にあったものというべきである」として、被告代表者が原告に対して、ハラスメント行為の優越的地位にあることを認定した。
  そのうえで、「約7か月間にわたって、原告にバストを見せるよう求め、被告代表者の性器を触ることを要求するなどの性的な発言のみならず、原告の陰部を触り、原告の臀部に被告代表者の股間を押し付けるなどの性器への身体接触を伴うセクハラ行為を継続して行うとともに、原告に対する報酬の支払を正当な理由なく拒むという嫌がらせにより経済的な不利益を課すパワハラ行為を行ったものであり、その態様は極めて悪質である。」と断じた上、その後に原告に生じたうつ状態等の身体不調をこれらのハラスメント行為によるものと認定し、慰謝料150万円を認容した。
  また、被告代表者の不法行為責任のみならず、「実質的には、被告会社の指揮監督の下で被告会社に労務を提供する立場であったものと認められるから、被告会社は、原告に対し、原告がその生命、身体等の安全を確保しつつ労務を提供することができるよう必要な配慮をすべき信義則上の義務を負っていた」として、被告会社の安全配慮義務違反を認めた。

3 フリーランスは、発注者と労働契約を締結しておらず、不安定な立場に置かれている。労働施策推進法や男女雇用機会均等法におけるパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの防止措置義務においても、フリーランスは対象外である。指針において、フリーランスに対しても対策を講ずるのが「望ましい」とされているにとどまる。
このようなフリーランスに対する対策の遅れから、発注者は報酬の支払いを免れようとフリーランス(受注者)にパワーハラスメントを行う、さらには優越的立場を利用した発注者が、業務を請け負いたい・継続したいと考えるフリーランスの心理に付け込んでセクシュアルハラスメントを行うといったことが横行している。本件は、その典型的な事案である。
本判決は、そのようなフリーランスが置かれている現状をくみ取り、フリーランスに対するセクシュアルハラスメント及びパワーハラスメントの慰謝料請求を認容した画期的な判決である。また、被告に対する不法行為責任だけでなく、被告会社の債務不履行(安全配慮義務違反)責任を認めた点も画期的である。
ただし、判決が認定した事実に照らして、慰謝料額が150万円というのは低額であり、この点については遺憾である。
私たちは、被告に対し、本判決を重く受け止め真摯に履行することを求める。同時に、すべての発注者に対し、発注者にはフリーランスへの安全配慮義務があることを認識し、ハラスメント防止対策などフリーランスが安全で快適に働ける就業環境の整備を行うことを求める。また、国に対しても、速やかにハラスメント防止関連法をフリーランスに適用することを求めるものである。

2022(令和4)年5月25日
日本出版労働組合連合会(出版労連)
ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)
すべてのハラスメントにNO!フリーライターAさんの裁判を支援する会
(Aさんを支援する会)
Aさん(業務委託契約報酬・ハラスメント慰謝料請求)事件弁護団


*****(以下、判決前に掲載しました)*****
過日は、フリーライターAさんのセクハラ・パワハラ・報酬不払い裁判の「公正な判決を求める」署名にご協力いただき、ありがとうございました。 3月末と4月末に、裁判所に提出しました。

さて、Aさんの裁判は5月25日に判決日を迎えます。
最大の争点は、セクハラ・パワハラの事実があったかです。
また、Aさんへのセクハラ・パワハラは、仕事をする中で行われたものであり、被告会社の使用者責任ないし安全配慮義務違反を問う裁判でもあります。慰謝料請求が認容されれば、フリーランスのセクハラ事件としては日本で初の裁判例となります。

詳しい内容は、支援する会のブログ(https://withyou-nets.hatenablog.com)をご覧ください。
竹信三恵子さんの東洋経済オンラインの記事(https://toyokeizai.net/articles/-/585796) でも取り上げてくださっています(後半)。

5月25日の判決言い渡しの後、場所を変えて記者会見を行います。
また、翌26日には、判決報告集会を開きます。
ぜひ、ご注目、ご参加をお願いいたします。


【ご案内】
フリーライターAさんのセクハラ・パワハラ・報酬不払い裁判
判決の言い渡し・記者会見&傍聴されたみなさんへの報告・判決報告集会のお知らせ

■判決の言い渡し
○日時:2022年5月25日(水)13時10分〜
○場所:東京地方裁判所(法廷番号は、下記のお問い合わせからご連絡ください)

■記者会見&傍聴されたみなさんへの報告
○日時:2022年5月25日(水)14時30分〜
○場所:スタンダード会議室虎ノ門駅前店(東京都港区虎ノ門1-8-7 富田屋ビル5F※東京メトロ銀座線「虎ノ門駅」1番出口より徒歩1分、東京地方裁判所より徒歩10分)
◆声明文を踏まえての判決内容に関する報告(長谷川悠美弁護士・青龍美和子弁護士)
◆記者からの質疑応答
◆記者会見終了後に、傍聴参加者からの質疑応答

■判決報告集会
○日時:2022年5月26日(木)18時30分〜20時
○場所:Zoom(https://bit.ly/3KlmANz)
※事前登録が必要です。
◆長谷川悠美弁護士・青龍美和子弁護士から判決内容に関する分析と今後の裁判に関する報告
◆上記に関する質疑応答
◆報告および発言
◆原告Aさんのあいさつ

【問い合わせ先】a-shien@syuppan.net(フリーライターAさんの裁判を支援する会)

どうぞよろしくお願いいたします。